34話 応えない訳にはいかないでしょっ!
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ると、芳乃は正美が思いもしなかったサインを出した。正美は驚きが表情に出そうになるのを何とか堪える。
――信じてるよ。
芳乃は笑顔の奥で内心そう呟く。
バッターボックスへ入る前に正美は大きく息を吐いた。
――普通こんな荒れ球ピッチャー相手にそのサインは出さないでしょ。
久保田がセットポジションに入る。彼女が左足を上げると同時に一塁ランナーの息吹がスタートを切った。
――でも。まだ芳乃ちゃんが信じてくれるなら??????。
直球は唸りを上げて正美に襲い掛かる。高めのボールゾーンを白球は通過しようと迫った。
――応えない訳にはいかないでしょっ!
そんな白球を正美のバットが阻む。打球はセカンドの定位置付近に向かって飛んだ。通常ならセカンドが難なく処理する打球だったが、そのセカンドは息吹がスタートを切ったのを確認して二塁のベースカバーに入っている。がら空きのセカンドを白球が駆け抜けていった。
息吹は二塁を蹴って三塁へ向かう。ライトはすぐにセカンドへ白球を戻すが、セカンドは三塁へ投げることが出来なかった。0 out走者1.3塁。
「ナイバッチ〜!」
ベンチで歓声を上げる芳乃を目にし、正美も嬉しくなる。
この後、正美は二盗を決め、ワンヒットでホームへ帰ってきた。
試合は最終回を詠深が三人でしっかり締めてゲームセット。5ー10で新越谷が勝利を納めた。
場所は変わり埼玉県営大宮公園野球場。大宮大附属VS柳大川越の試合が行われており、これに勝った方が新越谷の次の対戦相手となる。
新越谷ナインは屋内通路を抜け、観客席に出た。一筋の風が髪を撫ぜる。
「フフ??????この風、この肌触りこそ球場よ」
「確かにグラウンドとスタンドは空気が違うな。こっちは久し振りだから、何だか懐かしいな」
正美のボケを怜がナチュラルに潰した。これに落ち込む正美を白菊が慰めている。そんな様子を見て、怜は頭にクエッションマークを浮かべた。
そんな彼女達に構う事なくグラウンドでは試合が進んでいく。
柳大川越の朝倉は打者に対し球威のある直球を投げ込
む。
「ひーっ。相変わらずの速球ね」
直球の威力にビビった伊吹が怜にしがみついた。
「私もあんな直球打てないーっ」
それを見た正美も怜に縋り付く。たど、最も本気でビビっている息吹に対し、正美はおふざけでじゃれついているだけだった。
「??????ああ、速いな」
怜は慣れない後輩達の絡みに頬を染めながらも二人の頭を撫でる。
ちなみに、息吹は抱きつく対象を間違えていたのだが、それを知る者は本人のみであった。
一同は空いている席に座ると、
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