暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
夏大会5回戦 熊谷実業
32話 お相手さん初回から飛ばしてくるねー
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 正美は空を仰いだ。清み渡る蒼穹を背景に走る白の放物線はセンターを守る怜の頭上の遥か高くを通過してバックスクリーンに直撃する。

 熊谷実業は初回ツーランホームランで先制した。打ったのは四番でエースの久保田。彼女は県内最速と言われる速球を見せる前からその存在感を見せ付けた。

「いやー、お相手さん初回から飛ばしてくるねー」

 チェンジとなってベンチへ戻ってきた正美が呑気にそう言う。

「小技なしで自由に打ちまくるから、慎重だった梁幽館よりもある意味厄介かも」

 そう言いつつも、芳乃からも焦る様子は全く感じられない。

「大丈夫なの!?」

 そんな二人に対して菫が声を上げた。

「焦る必要はないよ」

 芳乃はそんな菫を宥め、言葉を続ける。

「まずは県内最速にビビらない事。当てる事くらいは出来るはずだよ」

 指揮官からの言葉を受け、息吹がバッターボックスに向かった。

《xbig》《b》《i》「締まってていくぞぉぉおおおおお!!!!!」《/i》《/b》《/xbig》
《xbig》《b》《i》『おおぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!』《/i》《/b》《/xbig》

 キャッチャーの十二分に気合の入った声出しと、それに応える選手やスタンドの声が球場に響き渡る。

 それにビビる息吹だったが、打席に入ると冷静に久保田の球をカットし、フォアボールで出塁した。

 本日、二番に入る正美の打順で息吹は大きなリードで久保田に揺さぶりを掛ける。梁幽館戦で正美が見せた戦術であった。能力に差はあれど、息吹と正美は似たようなタイプの野手である。元々真似の得意な息吹であるが故に、正美のコピーは比較的容易い。

「リードでかっ」
「あいつキャッチャーフライでタッチアップしてた奴だぞ」

 スタンドからの声がマウンドの久保田にも届いていた。

 久保田は堪らず牽制を挟むが、一塁手のタッチよりも伊吹の手がベースに触れる方が早い。

 そんな息吹に苦笑いを浮かべる正美もフォアボールを選んで出塁。久保田はバッターに集中できていなかったのか、一球もストライクゾーンに来なかった。

 続く珠姫のセーフティ気味のバントをサードが握り損ね満塁に。希のタームリー、怜の犠牲フライ、理沙のゲッツー崩れにより、新越谷は初回3点を奪い、逆転に成功した。

 試合は点の取り合いとなり、2回はお互いに1点ずつ入れ、熊谷実業 3ー4 新越谷。まだスコアボードに0が刻まれていない。そんな試合の流れが変わったのは3回の表。2 out走者1,2塁で迎えるは6番の今関。初回にエラーをしたサードである。名誉挽回の絶好のチャンス、気合いは十分だ。

 理沙がセットポジションから投じた白球を今関は一二塁間へ引っ張った。打球は
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