最速を前に
31話 刺し違えても止めろー!!
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
否や、目に見えて落ち込んだ様子を見せた。
「ごめんね。流石にベスト8以降は詠深ちゃんを温存できないから、今のうちに休んでおいて欲しいんだ。一応、最後は調整の意味も込めて投げてもらうから」
芳乃は拗ねる詠深の説得を試みる。
「伝家の宝刀はここぞという時に抜く物だもんねー」
正美は前回と同じく詠深をヨイショする作戦に出た。詠深の体がピクリと動く。
「伝家の宝刀??????なんか神々しいわね」
そして菫が駄目押し。すると詠深が機嫌を直し、復活を果たした。
「やっぱヨミちゃん単純だねー」
「正美っ、シーッ??????」
正美の呟きを菫が咎める。幸いにも正美の声は詠深の耳には届いていなかった。
「それにしても、もう5回戦なのにヨミちゃん温存なんて、芳乃ちゃんも大胆だよね」
そう言う正美は思う。熊谷実業はシード校である上、強打のチームだ。普通であれば投手を始めたばかりの理沙を先発に据えたりなどしない。
「熊谷実業は守りでは無名校にもにもそこそこ点取られているからね。まあ、ここまで詠深ちゃんを温存できるのも高橋さんから貰ったデータのお陰なんだけどね」
当然、芳乃も勝機の薄くなるような采配はしない。今回のオーダーも確固たる根拠があって決定したのだ。
「ところで私が2番で良いの?久保田さんのストレート私の力で打てるか微妙だよ?」
久保田 依子。埼玉県最速の名を欲しいがままにする速球派の投手であり、投球の約8割を威力抜群のストレートが占める彼女は、正美にとって天敵とも言える。
「大丈夫。確かに久保田さんのストレートは速いけどコントロールはあまり良くないから、粘れば塁に出れるよ。それに、野球はピッチャー有利だからみんなで1点を取りにいくって正美ちゃん言ってたよね?」
正美は芳乃の言葉に不意を打たれ呆然とするが、それも一瞬の事。
「あはっ。ほんとその通りだ。よーし、県内最速だろうと負けないよっ。どかーんと勝ってこー!」
次の試合に向け気合いを入れるのだった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ