23話 駄目だよ
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先にいる正美は精悍な顔付きでグラウンドを見つめる。
「詠深ちゃんは芳乃ちゃんの指示で敬遠してるんだよ。なら、芳乃ちゃんだけは絶対に目を逸らしちゃ駄目」
正美の言葉を受け、芳乃もグラウンドに顔を向けた。ただ、その表情は今にも泣き出してしまいそうである。
「芳乃ちゃん!」
そんな芳乃に、マウンドの詠深が安心させるように笑みを送った。
ピンチは続き、迎えるは初回にタイムリーを放った5番。
ブーイングが止まぬ中、詠深は一打席目と同じくナックルスライダー2球で追い込む。
珠姫は頭の中で配球を廻らす。
――第一打席はこの後の内角直球を打たれたけど、ここはあえて同じ攻めていく。ただし、強ストレート。ここで使おう。
一回戦翌日の事。
「出番〜先発〜やっと投げられる〜♪」
詠深は影森戦でマウンドに立つことが出来ず、鬱憤が溜まっていたのだろう。二日後の梁幽館戦の先発を前にし、ご機嫌に即興曲を歌っていた。
「??????変な曲。早くマウンド行ったら?」
詠深の側でプロテクターを着けていた珠姫は、そんな詠深を冷たくあしらう。
「最近タマちゃんと疎遠だったし、もう手放したくない」
「は?」
「18.44mも離れたくないよ〜」
そう言って、詠深は珠姫に抱き付いた。
「くっつかないで!暑い!??????ほら、行くよ!」
「待ってよ〜」
珠姫と詠深はそれぞれホームとマウンドへ向かう。
「来い!直球!」
珠姫はしゃがんでストレートを要求した。
「あ?」
そんな珠姫に詠深は疑問符を浮かべる。何故なら、珠姫は詠深から18.44mどころか、更にその奥にしゃがんでいたからだ。
「と、遠くない?もしかして引いた?」
先程抱き付いたことで珠姫に避けられているのではないかと、詠深は不安になる。
「いつもと変わらないパワーで、でもちゃんと届くように投げてみて」
そんな詠深を余所に、珠姫はいつもと変わらず詠深に指示を出した。
詠深は珠姫の要求通りに直球を投げる。
「オッケー!誰か打席に!次は何時もの18.44m。今投げたのと同じ様に投げてみて」
打席には正美が立ち、詠深は奥へ投げたのと同じ様に直球を放った。
「速くはないけど、ボールの伸びが段違いだね。凄く良いストレートだよ!」
正美は今の直球をそう評する。
――本人は普段手を抜いてる自覚はないだろうけど、あれだけの変化球を投げながら直球がショボいわけないんだよ。自由に引き出せれば武器になるけど、一気にやろうとすれば崩しかねないからね。自然に少しずつ引き出して上げる。
B0
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