暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
18話 キャッチャーとバッターじゃ見え方が違う
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
ールを何とかカットした。球種はカットボール。正美はフロントドアを仕掛けていた。B1ーS2

 今のは普段、詠深をリードしており、彼女の球を誰よりも分かっている珠姫だからこそカットできたが、対外試合であれば見逃し三振に斬っていてもおかしくなない。

 詠深の強みの一つは同じリリースでストレート、ナックルスライダー、ツーシーム、カットボールの四球種を同じ球速で投げ分けることである。

――チェンジアップとか緩急を使う球があれば、もっと配球が楽になるんだけどなー??????。

 躱すタイプのキャッチャーである正美はチェンジアップからのツーシームで打ち取りたいと考えていたが、無い物ねだりをしても仕方がない。1球、外にストレートを外した。B2ーS2。

 珠姫はこの後、更に2球粘る。

――ま、最後はこの球だよね。

 サイン交換が終わると、詠深はゆったりとしたフォームから7球目を投じた。白球は珠姫の顔面へと迫る。これは珠姫の良く知る軌道だった。

 珠姫は渾身のスイングを放つが、白球は正美のミットに吸い込まれ、乾いた音を球場に響かせた。

「ストライク、バッターアウト!」

 最後の球は顔面四分割のナックルスライダー。詠深の代名詞である。

 驚きの表情を浮かべていた珠姫だったが、すぐに腑に落ちたものへと変わっていった。

「キャッチャーとバッターじゃ見え方が違う??????確かにその通りだね」
「吉川さん相手にも油断しないようにね」
「肝に命じとくわ」

 正美の釘を指す言葉に珠姫は清閑な顔で答える。

「さて、それじゃあキャッチャー交代しますか」

 そう言って防具を外そうとする正美に待ったが掛かった。

「うちも二人と勝負させて!」

 常に強者との勝負を欲する新越谷一の熱血野球少女、希である。

「と言ってますが、タマちゃんどうする?」

 正美の視線の先にはムスっとした珠姫がいた。詠深が吉川に嫉妬する様子に呆れていた珠姫だったが、どうやら彼女も詠深をとられるのが嫌らしい。

「別に私に聞く必要ないわよ」

 珠姫は誤魔化すように視線を逸らした。

「またまたー」

 正美は詠深の頬を人差し指でつつく。

「ちょっ、正美っ!」
「わーっ、ごめんごめん」

 慌てて声を上げる珠姫に距離をとりつつ、笑いながら謝る正美。

 そんな様子を見た藤井先生は咳払いをする。それに気付いた一同はすぐ練習に戻るのだった。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ