暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第78話:クリスの居場所
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――あたし、こんなに楽しく歌を歌えるんだ――

 最初は人前で歌うなど、と思っていたが今は違う。歌う事が楽しくて仕方ない。誰かに歌を聴かせて、その誰かが楽しんでくれているのを見るのが楽しくて仕方なかった。

 最後まで歌いきり、クリスは観客達に向けてお辞儀をした。
 彼女の歌を、会場は万雷の拍手で称賛した。誰もがクリスの歌に心を打たれ、そして歌い手であるクリスの事も受け入れていた。

 その拍手は、クリスにとって彼女を受け入れる歓迎の拍手でもあった。

――そっか。ここはあたしが居ても良い所なんだ……そうなんだな、透――

 クリスの心の声が聞こえたのかは分からない。
 だがその瞬間、クリスは確かにクリスに対して頷いてみせたのだった。




「勝ち抜きステージ、新チャンピオン誕生!!」

 拍手が鳴りやみ、照明を落として暗くなっている会場でスポットライトに照らされたクリス。
 司会は彼女を讃え、会場を見渡し観客達に声を掛けた。

「さぁ、次なる挑戦者はッ! 飛び入り参加も大歓迎ですよッ!!」

 ここから先はエントリーしていない生徒や、一般の観客が参加となるイベントタイム。
 とは言え、あんなプロ顔負けの歌を披露された後で名乗りを上げるのは流石に勇気が要る。

「奏、お前OGとして行って来いよ?」
「ヤダよ。流石に大人気ないだろ」
「あ、そう言う意味でですか……」

 颯人に嗾けられるも、トップアーティストの自分が出るのは空気が読めていないだろうと奏は拒否する。決してクリスの歌に負けるとは言わない、奏の負けん気の強さに未来は思わず苦笑した。

 その時、観客席から手が挙がった。

「やるデスッ!」

 手を挙げた少女にスポットライトが当たり、観客の視線が集中する。
 少女は集まった視線を気にすることなく、その隣に座っていた少女も立ち上がると2人揃って眼鏡を外す。

 その少女2人を、クリスだけでなく颯人達はよく知っていた。

「あいつらッ!?」

「おやまぁ、大胆な……」

 クリスや奏は普通に驚いていたが、颯人だけは純粋に感心していた。如何に装者と言えど、2人は年端もいかぬ少女。その少女2人が、敵地とも言えるリディアンに2人だけで乗り込んできたその胆力を彼は評価していたのだ。

 様々な視線を向けられながら、2人の少女――切歌と調は挑発的な視線をクリスに送り宣言した。

「チャンピオンに――」
「挑戦デェスッ!!」

 祭りはまだ終わらない。
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