暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第78話:クリスの居場所
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 緊張する彼女に、クラスメイトらがエールを送った。

「頑張って、雪音さん!」
「北上君って子も言ってたじゃない! 雪音さんならきっと大丈夫だって!」
「で、でもよ……」

 今一歩を踏み出す事が出来ないクリス。そこにクラスメイトの1人が、1枚のメモ用紙を取り出して彼女に渡した。

「そうだ! これ、北上君から預かってたの!」
「と、透から?」

 渡されたメモ用紙をクリスが見る。
 そこにはシンプルに、こう書かれていた。

〔僕だけを見て〕

 一瞬何の事か分からなかったクリスは、メモ用紙に意識を奪われてしまう。

 その隙を見逃さず、クラスメイトらはクリスの背中をポンと押した。決して強い力では無かったが、それでも不意打ちだった為にクリスはそのまま舞台に押し出され、テンパりながら舞台の真ん中へと立たされた。

 当然それは観客席に居る響や颯人達の目に留まる事になり、4人は目を丸くした。

「響、あれって!?」
「うっそぉ〜!?」
「クリスの奴、何処にも居ないと思ってたら……」
「ああ言うのには出たがらないと思ってたけどなぁ?」

 クリスの登壇に4人が驚いていると、翼と透がやって来た。

「雪音だ。私立リディアン音楽院、二回生の雪音 クリスだ」
「お? 翼に透?」
「……もしかして、何かあったのか?」
「ちょっと――」

 翼が颯人達に事情を話す前に、曲のイントロが流れ始める。
 しかしこのタイミングになっても、クリスの緊張はまだ解れていない。

 クラスメイト3人が応援するが、今のクリスには殆ど聞こえていなかった。

――透ッ!?――

 思わず心の中で透に助けを求めるクリス。そこで彼女は、手の中のメモ用紙とそこに書かれていた一文を思い出した。

――僕だけを見て……あッ!――

 クリスは素早く観客席を見渡し、そして透の姿を見つけた。翼や颯人の傍で、真っ直ぐクリスを見つめて小さく手を振っている。

 透を見つけたクリスは、気付けば視界から他の観客の姿をシャットアウトしていた。
 いや、それは正確ではない。正確には、透が見守ってくれていると言う認識がクリスの中にある他人に対する警戒心と言うか恐怖心を和らげてくれていたのだ。

 気付けば、クリスはとても自然に歌えていた。肩から力が抜けて、綺麗な歌声を劇場内に響かせていたのだ。

 その歌声に、観客の誰もが聞き惚れていた。中にはその歌声に心を震わせる者も居たくらいだ。

 言うまでも無く最も心を震わせていたのは透だった。今彼は、彼自身が愛した少女が心から楽しんで歌う姿を見て感激していたのである。

 それはステージ上のクリスにも伝わり、クリスは自分が楽しんで歌っている事を自覚した。


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