暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第78話:クリスの居場所
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楽しそうに歌ってたからッ!」
「う――――!?」

 一瞬歌を否定しようとしたクリスだったが、透がすぐ近くに居る事に思わず言葉を詰まらせる。
 そこに事実を指摘され、クリスはぐうの音も出なくなってしまった。

 確かにクリスは歌を楽しんでいた。以前の様に歌に対し嫌悪感を抱いたりしてはいない。しかし、透以外の人の前で…………それもステージ上で歌うとなれば話は別であった。

「いきなり歌えなんて言われて、歌えるものかよ」

 呟くクリスに、翼はチラリと透を見てから問い掛けた。

「だが北上は多分、お前の歌を聴きたいと思ってるぞ」
「えっ!?」

 クリスだけでなく女子生徒達も一斉に透の事を見た。4つの視線に晒され一瞬気圧される透だったが、直ぐに気を取り直すと彼は苦笑しながら小さく頷いた。
 透はクリスの歌が好きなのだから、彼女の歌が聞けると聞いて否と答える訳がない。

 そしてこう言われるとクリスは弱かった。結局クリスがステージ上で歌う事に乗り気でないのは、衆人環境で歌わされる事に恥ずかしさがあるからであり、一歩を踏み出す踏ん切りがつかなかったからだ。
 ここで透が少しでも背中を押してくれれば、クリスはその一歩を踏み出す事が出来る。
 翼はそれを狙っていた。

「え、っと……き、聴きたいか? 透は……」
〔勿論。クリスが歌う事が嫌でなければ〕
「い、嫌だなんて――――」

 透とクリスのやり取りを、その場の全員が優しく見守っていた。




***




 学院内の劇場は非常に盛り上がっていた。
 既に何組も歌を披露した後であり、その中には響の友人である弓美達も居た。

 その様子を響と未来も観客席から見ており、次々とステージに上がる者達の披露する歌を純粋に楽しんで聞いたいた。

 そこへ颯人と奏がやって来た。何処か疲れた様子の颯人を、奏が引っ張って響達の傍の席に座らせる。

「あ! 奏さん、颯人さん!」
「よ! 響に未来! 隣失礼するよ」
「どうぞどうぞ……って、颯人さん一体どうしたんですか?」

 見ると颯人は何処か疲れた様子を見せていた。決して悪い意味ではない感じなのだが、学際を楽しんできたと言うにしては少し疲れすぎと言うように見える。

「ん? な〜に、気にすんな。ちょっと一仕事してきたってだけの話だから」
「誰の所為だ、誰の……」
「「一仕事?」」

 一体何の事だと顔を見合わせ首を傾げる響と未来。

 その時、司会の少女がマイクを片手に声を上げた。

「さて! 次なる挑戦者の登場ですッ!!」

 司会がそう告げると、舞台袖のクリスが緊張しながら両手でマイクを握り締める。歌う事は好きだが、それでも人前で歌うのはやっぱり慣れていないのだ
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