episode15『逢魔シン』
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を返しの付いた刃物でぐちゃぐちゃに引っ掻き回されるような罰を越えて、痛みの海に溺れそうになっても、それでも意志だけは絶対に折らない。
――小指に残る、指きりの感触が消えない限り。
――――――――――――――
「――おい、オイ、オイ、待て、テメェ。何をしてやがる」
世界が紐解かれる。
銀色の輝きが大聖堂を照らし出す、崩落しつつある天井の瓦礫群は、シンを中心として巡る魔鉄分の奔流によって散らされて、内部に包まれたシンやヒナミ、智代のもとに降ってくることはない。
契約の輝きだ。OI能力者と魔女による、新たなる製鉄師誕生の儀式、気が付けばシンを包み込んでいた白銀の鬼鎧もその姿を溶かして、新たなる生誕を祝福するかのように二人の周囲を巡っている。
「テメェ、おい……ッ!オレの目の前で、オレの、オレの“革命”を、オレの夢を、オレの世界を、奪いやがるつもりか……っ!この、このガキがぁッ!!」
激高するスルトルの両腕に、目を焼くほどの輝きを放つ焔が灯る。僅か手のひらに収まる程度の小さな炎にも関わらず、じゅう、と周辺の床が溶解を始め、赤熱した。
スルトルの抱えた激情の燃え上がり方に比例するように、その両腕に宿った炎が爆発的に膨れ上がっていく。これまでの炎がお遊戯に見えるほどの高温に、空気中の塵が自然発火する。
スルトルの、紛れもない殺意が噴出して――。
「……振鉄。」
瞬間。
「――『会者定離、我大地の王なりと』」
そんなチンケな炎を吹き消すかのように、太陽のフレアの如き巨大な炎が、スルトルを大聖堂から消し飛ばさんばかりに膨れ上がった。
「……ッ”!?」
咄嗟に両腕の炎を噴射、移動のエネルギーに変換してその場から大きく飛び退る。それでも強烈な熱風がスルトルの全身を焼き、更にはスルトルの制御を大きく超えて彼の体を吹き飛ばす。その勢いは衰えず、教会向かいの魔鉄柵に衝突してようやく停止した。
炎はそのまま巨大な柱となって、遥か天空まで登っていく。深夜に差し掛かった真っ暗な冬空を、雲を貫いてまるで昼のように照らし出した。
天まで続く光の柱はやがて幾つもの束となって、再び大聖堂へと降り注ぐ。それらは一点に収束して竜巻のように渦巻くと、その全てを一瞬の内にソラへと溶かす。
――その中から現れたのは、一匹の鬼だった。
深紅の双眸が夜闇に輝く、口元を覆うように纏った赤い外殻のアギトから真っ白な吐息が蒸気機関のように噴出された。
額から伸びる二本の大角、全身の至る所から伸びる棘、神の十字架を踏み付けにする両の脚は、まるで怪物のソレだった。
「……シスター、ヒナ
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