第四章
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「それが誰かはわからないが」
「会いたい相手がいる時代に行けるのですね」
「そうした場所だ、望むなら未来にも行ける」
「そちらにもですか」
「私はそこにも行った、千五百年後だったが」
「どんな時代でしたか」
「そのことは書に書いたがわからない時代だった」
皇子はまた笑って話された。
「どうもな」
「皇子もですか」
「鉄の鳥が空を飛び鉄の箱が道を走っていて誰もが変わった服を着てな」
「妖術が幅を利かしているのですか」
「科学とか言うらしいがな」
皇子はその未来のことを話された。
「板の様なものを耳と口に当てて遠くの者と話をしたり石の高い建物が連なってな」
「訳がわかりませぬが」
「先はそうなっていた」
「千五百年先は」
「その頃の帝も立派な方であられるがな」
「帝はですか」
「千五百年後も健在であられる」
皇室は存在しているというのだ。
「世の中は随分と変わったがな」
「それは何よりです、そしてそのことをですか」
「書に書いておいた、だが」
「その書は」
「そなた達は知らないな」
「はじめて聞きました」
「私はそのことも知っている」
皇子はここで達観された顔になられた、その達観には悲しさも見られた。
「その書は失われ家も滅んだことはな」
「そのこともですか」
「知っている、それは運命だ」
「だからですか」
「それは変えられぬ」
このことも話された。
「そのことも知った、先のことを知り過ぎることはな」
「よくはない」
「その面もある、ではそろそろ時間だ」
「では」
「また来る時があれば会おう」
「はい、それでは」
「またな」
皇子は供の者と共に謹んで一礼した役人に鷹揚に応えられた、そして二人はその場でだった。
元の世界に戻った、そこは夜のままだった。供の者は周りを見回して夜であることを確認しながら役人に話した。
「いや、まるで」
「夢の様だったな」
「まことに皇子にお会い出来るとは」
「そうだな、大僧正の言われたことはまことだった」
「左様ですね」
「あの方は嘘を言われる方ではないが」
それでもというのだ。
「しかしな」
「あまりにも突拍子のないお話だったので」
「信じられなかったが」
「実際にでしたね」
「そうだった、では都に戻り」
「大僧正にこのことをお話しますか」
「そうしよう」
こう言ってだった。
役人は実際に都に戻るとすぐに行基に皇子に会ったことと皇子のお話をした、すると行基はそれならと頷いた。
「そうですか、お会い出来ましたか」
「実際に。そして皇子はです」
「あの室のごとをご承知で」
「ご家族のことも。それにです」
「未来はですね」
「随分変わった世になっておる様です」
「その様ですね、拙僧はお会
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