第二章
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「面白いことにな」
「では」
「そうだ、これよりだ」
まさにというのだ。
「少しそこに行ってお会いするか」
「皇子様に」
「どうだ」
「そうですね、ではです」
供の者も役人の話に興味を覚えて答えた。
「今日幸い新月ですし」
「丁度いいな」
「夜にそこに行ってみますか」
「うむ、早速な」
「それでは」
供の者も頷いてだった、そのうえで。
二人で夜にその石で造られた室に向かった、それは巨大と言うべき石達で造られたもので平地の真ん中にあった。その室を見てだった。
供の者は役人に首を傾げさせて言った。
「あの、この室は」
「何でも蘇我氏のな」
「陵と聞いていますが」
「わしもそう聞いておった」
役人は供の者に答えた、共に髭はなく若々しいが供の者は役人より三つ程若く見えて着ている服も役人の方が格が上だ。
「これまではな」
「左様ですね」
「だが大僧正様が言われるにはな」
「ここがですか」
「その場とのことだ」
「そうなのですか」
「だからな」
役人は供の者に話した。
「これよりな」
「この中にですな」
「入るとする、何ならわし一人でもいいが」
「いえ、私もです」
供の者はそそくさとした感じで答えた。
「興味がありますので」
「皇子にお会いしたいか」
「そう思いますので」
だからだというのだ。
「ここはです」
「わしと共にか」
「入らせてもらいます」
室の中にとだ、こう言ってだった。
供の者も石の室の中に入った、空には月はなく星だけがある。二人はその中で日が変わるのを待った。
やがて二人の周りが明るくなった、それで室から出るとだった。
昼になっていた、役人は昼になっていた平地を室の入り口から見回してそのうえで供の者に対して言った。
「夜だというのにな」
「急に昼になったので」
「このことだけでもな」
「不思議ですな」
「うむ、ではこれからな」
「皇子にですね」
「お会いするか、この場ならな」
今自分達がいる室のすぐ傍ならというのだ。
「すぐ近くに宮がある筈だ」
「皇子の頃のですね」
「確かこの頃は推古帝の筈」
帝のことも話した。
「そして蘇我家もある」
「そうした頃ですな」
「うむ、ではな」
「そのことも頭に入れて」
「皇子にな」
「お会いにですね」
「行こうぞ」
こう言ってだった。
役人は供の者と共に厩戸皇子を探し彼に会いに行こうとした、だが。
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