第四章
[8]前話
「だからな」
「補充は幾らでも来る」
「来れば進撃開始だ」
「そうしていこう」
「命令が来ればな」
「その命令通りに出来なければ」
まさにというのだ。
「死ぬのは我々だしな」
「絶対に役目を遂行していくぞ」
「そうしていかないとな」
「この戦争の間は」
二人はこう話してだった、兎に角だった。
自分達が生きることを考えて必死に動いていった、ソ連軍は多くの損害を出しながらも何とかだった。
ドイツ軍に勝った、この時幸いにもコズイネンもドロコビッチも五体満足で生きていたが。
勝った喜びよりもだった。
「生きているな」
「ああ、俺達はな」
「よかったな」
「本当にな」
「粛清されずに済んだ」
「味方にも撃たれなかった」
「そして敵の攻撃でも死ななかった」
そうして生き残れたことを喜んでいた。
「本当によかった」
「そうだな」
「ならこれからもな」
「生きられる様にしよう」
廃墟となった周りを見回りながら話した、しかし。
二人共結婚して家庭も持つ様になったが家では酒ばかり飲む様になった、それはスターリンが死んでからもであり。
コズイネンは酒を飲みつつ妻に言った。
「生きているだけでいいんだ」
「それだけでなの」
「ああ、それだけでな」
こう言ってウォッカを飲む、政治将校からある街の重役になったが彼は家では酒ばかり飲む様になった。それはドロコビッチも同じだった。彼等は酒ばかり飲みそうして生きていればいいと思うだけになっていた。
政治将校 完
2021・1・16
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