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人徳
第一章
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                人徳
 まだ戦争が終わって間もない頃だ、プロ野球も再開され人々は次第に観客席に戻ってきていた。それから数年経ってだ。
 二リーグに分裂してすぐに南海ホークスの監督山本一人は富山球場のベンチでこんなことを言っていた。
「ほんまごたごたが続くな」
「そうですね」
「戦争が終わっても」
「チームが出来ては消えたり」
「リーグが二つになったり」
「うちも何かとありましたし」
 選手達も山本に言う。
「巨人には別所取られましたし」
「あれはほんま腹立ちますね」
「三原さんもやってくれましたね」
「よくもまあ」
「ああ、あのことは忘れられんわ」
 山本は別所のことは怒った顔で言った。
「絶対にな」
「そうですね」
「三原さんとは決着つけたかったですが」
「巨人はセリーグになりましたし」
「シリーズがあるんでそこで、となりますね」
「そうなるな、南海自体もな」
 山本は今度はチームの話をした。
「親会社が近鉄さんの下に入ったりしたしな」
「ですね、南海が」
「それでチーム名も一時期近畿日本でしたし」
「ほんま戦争終わって色々ありますね」
「落ち着きませんね」
「そやな、しかし今日の試合は勝ってる」
 南海がというのだ。
「ほなな」
「このままですね」
「勝ちますね」
「そうしますね」
「毎日が強いけどな」
 それでもというのだ。
「勝ってくで」
「そうしましょう」
「まずは目の前の一勝ですね」
「そして優勝して」
「巨人がシリーズに出て来たら」
「そこでやっつけたるわ」
 山本は強い声で言った、そうして試合を進めていき。
 九回裏南海は二点リードしていた、ここで山本は二塁の自分のポジションからナインに言った。
「ええか、この回で終わりや」
「はい、ここで勝ったらですね」
「もう試合はうちの勝ちですね」
「そやからですね」
「あと一回頑張っていくで」
 こう言って選手達を鼓舞した、だが大映も維持を見せてだった。
 ノーアウト二塁三塁と一打同点の状況になった、そしてバッターボックスには代打の板倉が入った。板倉はセンターに大きなフライを放った。
 それを南海のセンターである黒田が掴んだ、山本はこれでワンアウトとセカンドから思った。だが。
「セーフ!」
 審判はこう言った、それで打球はツーベースとなった。これに山本は激怒して審判達に駆け寄って問い詰めた。
「今のがセーフか!」
「はい、セーフです」
「何処がや!わしはちゃんと見てたぞ!」
 山本は審判達にどなった。
「セカンドの場所からな!わしは守備に就いてたからわかる!セカンドに審判はおらんやろ!」
「それはそうですが」
「我々も観ていました」
「それで判定を出してい
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