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慎重な対応
第一章

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               慎重な対応
 近頃その会社では声が聞こえていた。
 商品のリコールそして社員の態度の悪さ、そういった話がだ。
 ネットから少しであるが起こっていた、それでだ。
 社内でも聞く者が出ていた、それで若い社員である奥保夏樹は難しい顔で自分の所属している宣伝一課長の池上俊哉に対して言った。
「あの、今我が社は」
「とんでもないことになっているな」
「はい、商品のリコールが相次いで」
 その眼鏡をかけてややふっくらした顔で言った、黒髪は少し茶色がかっていて真ん中で分けている。背は一七三程だ。
「しかも社員のサービスがです」
「悪いとだな」
「問題になっていて」
 それでといのだ。
「イメージが悪化しています」
「そうだな」 
 池上も言った、四十位の年齢で色黒で丸い顔には皺が出て来ている。黒髪は左から右に流しているが毛が少し細くなっている。背は一六七位で痩せた顔だ。
「実は私もな」
「今の我が社の状況が」
「心配だ」
「会社のイメージは大事ですからね」
「それがいいに越したことはないからな」
 池上もこう言った。
「だからな」
「それで、ですね」
「私からも上に言ってみよう」
「迅速な対応が必要だと」
「すぐにリコールに対処してだ」
 会社の商品へのそれにだ。
「社員の態度が悪いならな」
「それをあらためることですね」
「さもないと余計に事態は悪くなる」
 そうなるというのだ。
「だからな」
「今のうちにですね」
「すぐに対処して問題点を改善しないとな」
 それこそというのだ。
「我が社は終わりだ」
「左様ですね」
「だからだ」
 それでというのだ。
「私達はな」
「すぐにですね」
「対応しなければならない」
「では」
「すぐに言おう」
 こう言ってだった。
 池上は奥保を連れて宣伝部長の河野澤樹に提案した、すると河野は自分の席で腕を組んで言った。色黒で眼鏡をかけているが肌は蜜柑を思わせるもので黒髪は短い。一七五程の身体は丸々としている。
「私もそう思っていた」
「今の我が社はですね」
「よくない状況にある」
 こう言うのだった。
「商品のクレームにも社員の態度もな」
「どれもですね」
「すぐに対応しないとな」
 そして適切に処理しないと、というのだ。
「下手をすれば問題がより大きくなって」
「大変なことになりますね」
「まさに今のうちだ」
「そうですね」
「確かにうちは大きな会社だ」
 日本の誰もが知っている様な企業である。
「そう簡単には揺るがないが」
「それでもですね」
「揺らぐものは揺らぐ」
 そうなるというのだ。
「そして最悪な」
「潰れることもですね」
「ある」
 河野は池上に告げた。
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