第六百十一話 普通の人が悪人になってその二
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「嫌いにはね」
「なれないわよね」
「自分もそうなる可能性あるから」
「同じ立場だと」
「そのことが否定出来ないから」
「あれよね」
ルビーは深遠な顔で言った。
「偉そうに言うけれど」
「偉そう?」
「偉そうって言うと」
「ええ、シェークスピアは人間を描いているのよ」
こう二人に言った。
「つまりはね」
「ああ、それね」
レミはルビーのその言葉に神妙な顔になって応えた。
「それはね」
「そうでしょ」
「ええ、だからこそ今も生きているのよ」
彼が残した作品達はというのだ、もっと言えばその作品の中に登場する人物達はというのである。その彼等も。
「シェークスピアの作品はね」
「千数百年経ってもね」
「生き生きとしてるわね」
「本当にね」
「そうね、人間なのよね」
ダイアナも言った。
「マクベス夫人なんて悪の権化だけれど」
「その悪もね」
「考えてみればね」
こうレミに言った。
「人間的よね」
「そうよね」
「人間の悪なのよね」
マクベス夫人のそれもというのだ。
「言うなれば」
「そうね、実際に」
「悪魔よりも悪くて」
「極悪非道だけれど」
「リチャード三世と同じで」
この人物にしてもマクベス夫人にしても史実とはかなり異なると言われている、だがシェークスピアによって広くそうした人間とみなされているのだ。
「悪の権化だからこそね」
「人間的よね」
「その悪人ぶりが」
「悪の権化っていっても色々よね」
ルビーはここでこう言った。
「野獣みたいなのとかサイコ殺人鬼とか」
「そうそう、餓鬼みたいなのとか」
レミも応えた。
「独善的過ぎるのとか」
「色々な種類いるけれど」
「シェークスピアだとね」
「色々な理由で悪人になって」
そしてというのだ。
「それがね」
「人間的なのよね」
「悪人だとしても」
「悪人って言葉がね」
それがとだ、ダイアナは言った。
「そもそもね」
「悪い人だからね」
ルビーが応えた。
「要するにね」
「人間よね」
「善人も人間で」
「善い人だから」
「悪人もね」
「人間ね」
「吐き気を催す邪悪ね」
レミはこの言葉を出した。
「この域に達した悪人になると」
「人間じゃないのもいるのよね」
ダイアナはまさにとレミに言葉を返した。
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