第十一幕その十一
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「昔はね、お蕎麦は秋に収穫するから」
「それで、ですね」
「そう、夏はね」
「お蕎麦の保存状態も悪くなって」
「それでね」
「夏のお蕎麦はですね」
「かなり味が落ちていたんだ」
「そうだったんですね」
「けれど今は保存技術も上がったから」
だからだというのです。
「普通に美味しいよ」
「そうですね」
「だから夏にざるそばもね」
「美味しいんですね」
「秋も美味しくて」
それでというのです。
「夏もなんだ」
「そうなったんですね」
「そして晩ご飯はだね」
「はい、ざるそばです」
「それにサラダだね」
「王子も呼んで」
そしてというのです。
「食べましょう」
「それではね」
「それで王子にもですね」
「赤福餅を渡すよ」
トミーにそうしたのと同じ様にというのです。
「そうするよ」
「そうですね」
「うん、しかし帰ったら帰ったらでご馳走なんてね」
先生はにこりとしてこうも言いました。
「僕は幸せだよ」
「幸せですか」
「凄くね」
「そんなにですか」
「うん、とてもね」
「ざるそばもサラダも普通にあるお料理で」
トミーはにこにことしている先生にお話しました。
「これといってです」
「特にご馳走と言ったりだね」
「幸せと言うまでには」
そこまではというのです。
「思いますけれど先生はそう言われますね」
「そう、美味しければね」
それならというのです。
「ご馳走でその美味しいものを食べられたら」
「幸せですね」
「それだけでね」
「先生にとっての幸せは」
「もう周りにね」
ご自身の身の回りにというのです。
「幾らでもね」
「ありますね」
「そうなんだ」
これがというのです。
「僕の場合はね」
「そうですね」
「何でも幸せだって感じられたら」
「不平不満なく」
「いいよね」
「はい、確かに」
トミーもその通りだと頷きます。
「そのことは」
「そうだよね」
「幸せは周りにですね」
「そう、すぐ近くにね」
「沢山あるんですね」
「その幸せを見付けてね」
そうしてというのです。
「楽しめばいいんだよ」
「それがいいんですね」
「そう、それが出来ないとね」
「幸せでなくなりますか」
「世の中どう見ても満ち足りていて」
そうした生活を送っていてというのです。
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