第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第9話 半月の塔 SIDE:R 後編
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に水面を走行し始めたのであった。いよいよを以って鈴仙の水上走行の旅は始まったのであった。
◇ ◇ ◇
「凄い光景ですねぇ……」
彼女の視覚、感覚に飛び込んで来るもの全てに彼女は心の中で舌鼓を打つかのような高揚した気分へと押し上げられていった。
まず、目に飛び込んで来る光景はスピード溢れ目まぐるしく動くものであった。
それは、自身の飛行能力では味わえない体感であったのだ。飛行の際は幾ら速くても、あくまで自身の力量の下での行動故に無茶は自然と避けられるようになっていたのだ。
だが、今は機械という自分とは別の代物に行動を委ねている状況なのだ。故に自己責任だけでは賄い切れない危なっかしさがそこには存在しているのだった。
そう鈴仙が思っている間にも、辺りの様子に変化が見られていったのである。
鈴仙の目に飛び込んできたのは、水面に浮かぶ三角形のブイであった。それを彼女は咄嗟の判断で機体を横へずらして回避に成功するのであった。
そう、彼女は今しがた目の前に現れた障害物の回避を、この機体に乗りながらにして成功させたという事なのである。
つまり、今鈴仙は機体を自分の意思により思いのままに操れている訳である。機械仕掛けの物体が自分の意思により動く、それは地上のSFにあるような産物ではないかと鈴仙は思うのだった。
「よし、回避成功……っと」
思いながらも鈴仙は得意気に目の前に現れた驚異の回避に成功した事に振る舞うのだった。そして、彼女は『段々コツは掴んできた』と気分は上々となってきたのである。
そう気分を良くしながら鈴仙は走行を続けていった。だが、こういうシチュエーションにて起こりうる障害は当然これで終わりではないのである。
ここで鈴仙は思い返すのだった。勇美から貸してもらいプレイしたビデオゲームの内容を。
今の状況は『アクションゲーム』における、乗り物を操り動かすという特殊な操作を要求される区画そのものではないかという事。そして、そのような局面で壁となってくるのは何も障害物だけではないのである。
そう鈴仙が思い至るのと、『それ』が起こるのとはほぼ同時期であったようだ。
「敵発見!」
「おちろー!」
勿論これは鈴仙が発した言葉ではないのである。それは他でもない、今しがた彼女の行く手を阻む為に現れた玉兎達であったのだ。
そう、鈴仙が思っていた事はこれであったのだ。アクションゲームで乗り物を使った移動時に立ちはだかってくるのは、こういった配備された『敵キャラ』も存在するというものなのだ。
しかし、これは今現実に起こっている事である。何せその敵と対峙するのはコントローラーで操れるゲームのプログラムではなく、生身の自分自身なのだから。その体感はゲームとはまるで別物であったのだ。
だが、鈴仙は断じて動じる
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