第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第8話 半月の塔 SIDE:R 前編
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であった。だが、そこにはまるで先に進めと言わんばかりに途中までは足場が存在していたのである。
これはどういう事か? その答えは鈴仙は分かっていたのである。
無論この塔は月の民が造った代物である。それが故に、月の民にしか作動出来ない仕掛けをするというのがセキュリティー上懸命な試みといえよう。
そう思い至り、鈴仙は月の住人である自身にしか出来ない事をここで試みるのであった。
それは、月の民特有の波長を照射するというものであった。それを鈴仙は何もないかに見える足場の途切れた場所へと向けたのであった。
するとどうだろうか? 今まで何もなかったかに見えた場所に、足場が次々と浮上して来たのである。
それは、まるで飛び石のように水路の間々を繋ぐように出現していったのだった。その光景はまるで……。
「地上のゲームに存在する『RPG』そのものね……勇美さんが見たら喜びそうね」
そう鈴仙はしみじみと呟くのであった。そして、今頃彼女が担当している塔でももしかしたら同じような仕掛けがあり、勇美はそれを楽しんでいるのではないかとも予想してみていたのだ。
それはさておき、漸く自分はこの塔で仕掛けを作動させたのである。後はそこを進んで行くだけである。
だが、そこで鈴仙は一瞬身を竦めてしまったのだった。何せ、水の上に飛び飛びで足場は出現したのである。その上を飛び跳ねながら移動する訳なのだから。
そして、鈴仙は今ミニスカートを履いている訳である。
そう、地上の兎となった事を自覚する為に月にいた頃に着ていたブレザー風の軍服はもう来てはいないが、今の彼女もブラウスに青のスカートを履いているのだった。
「……スカートも止めた方が良かったかな?」
鈴仙は割りと本気でそう思うに至った訳だが、それは最早後の祭りというものであろう。そこで彼女は腹を括って『スカート着用』の状態にて、飛び石を渡る事にしたのだった。
「気を付けて渡らないといけませんね」
そう鈴仙は自分に言い聞かせるように呟く。何せ、その足場は水の上に出現しているのだ。故に上手く足場を移らなければ水の中に落ちてしまう事であろう。
だが、彼女はそれに臆する事は無かったのである。何故なら、彼女はかつて依姫の元で修行を積んでいたのだから。精神面は完全には磨き切れなかったものの、肉体的には確実に向上していったのである。
「それが、ここで役に立つ訳ですか……」
その事に鈴仙は些か複雑な心境となるのであった。依姫の元を逃げ出した身だというのに、彼女の元での鍛錬がこうして役に立つ場面が現れたという事に。
だが、活かせるものは何でも活かす。それが彼女が勇美と交流を持つ上で学んできた理論の一つであった。
「勇美さん、あなたに倣わせてもらいますよ♪」
そう鈴仙はまるで勇美がここにいるかの
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