第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第8話 半月の塔 SIDE:R 前編
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思ったのである。
「それじゃあ、私も楽しまないといけないですよね♪」
鈴仙はそう自分に言い聞かせるかのように言い切ったのである。何事も楽しむ姿勢、それが勇美から教わった大切な事だから、自分もそれに倣うべきだと鈴仙は結論付けたのであった。
そう思うと、鈴仙の気持ちは弾むような心地よさに包まれるのだった。この重要な任務も楽しんでやればいいのだと。
だが、鈴仙には譲れないものがあるのだとた。
「でも、パンツは脱ぎませんよ」
幾ら勇美の事が参考になろうとも、そこまで倣う気は鈴仙にはなかったのである。
あの子ならやりかねないと思うのであった。気分の高揚のままに一線を越えた解放感を得ようとしてしまうのだ。
そして鈴仙は思った──今頃あの子はどうしているだろうと。
あの子の事だから、きっと楽しんで事に務めているに違いない。そこまではいいのだ。
だが、誰もいないのをいい事に堂々とパンツを脱いでしまっているのではと、鈴仙には一抹の不安がよぎるのだった。
──その懸念は、意外にも払拭される事になるのは、この時点での鈴仙は知る由も無かったのである。
それはそうと、やはりこの塔内は益々を以て建物内だという事を忘れさせるような代物だと鈴仙は感じていた。
何故なら、ここには心地よい風が吹き抜けているからであった。しかも、辺りの水が海水だからである為か、それを掬い上げて潮風にすらなっているようである。
改めて、鈴仙は月の技術に舌を巻くのであった。そして、今では自分は地上の兎になったからこそ、それを敵にする事の恐ろしさをまざまざと感じさせられるのであった。
だが、鈴仙に後悔の二文字は無かった。その我がままといえる選択を、かつての師である依姫は容認してくれていて色々手を回してくれている事は彼女も知る所であったし、何よりこの選択は鈴仙自身が決めた事であるのだ。
故に鈴仙は自分の決めた事は最後までやり遂げよう、そう心に秘めるものがあるのだった。
そのような想いを胸に携えながら鈴仙は水の迷路の中を歩を進めていたのである。
そう、迷路と呼ぶにこの場所は相応しかったのである。周りは幅の狭い通路が幾重にも張り巡らされ、平行感覚を失わされる事がもうけ合いだったのである。
だが、鈴仙はその迷路の中を迷う事なく進んでいたのだった。それが出来るのは彼女の能力が故であった。
彼女の能力は『波状』のもの全てを操るもの。そして、それは波状のもの全てを『感知』出来るものでもあるのだ。
勿論、それは水の波も含まれるのである。
そう、鈴仙はこの水の迷路に張り巡らされている水から微弱な波を感じ取っているのだった。
そして、当然これらの水の都を装った塔内は人工的に造られているのだ。故にそこに生み出されている波も意図的に造られたものなのだ。
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