第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第6話 金属対決・別章:前編
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見事に歯車を入手した勇美は、早速その足でエレベーターへと向かった。
部屋に入ると、再び外の景色が丸分かりとなる不思議な体感をするのだった。何度味わっても違和感のある光景であったが、今はその心地よいミステリアスな感覚を噛み締めている時ではなかったのである。
勇美は手に持った歯車を部屋に浮かぶ水晶体へと翳す。すると、それは起こったのである。
何と、歯車が水晶体へと吸い込まれていったかのようであった。まるで、原生生物が自分の行き先を遺伝子に任せて求めるかのように。
更に、歯車は水晶体に接触すると、そこからずぶずぶとスライムに取り込まれるかのように溶けるように飲み込まれるという光景が繰り広げられていたのだった。
その、異様な現象に勇美は思わず『ごくり』と唾を飲むのであった。そしてこう思った。
(さすがは、月の技術って所かなぁ……)
その事実を勇美は噛み締めるのであった。今のこの瞬間は、そう表現するのが一番的確に思われたのであった。
地上に生きる者としては、そう簡単に行き着く事の出来ない境地であろう。
確かに、月の民の思想は偏見に満ちた排他的に仕上がってしまった所が大きい。だが、その能力が地上に住む者よりも遥かに洗練されている事は紛れもない事実なのであった。
勇美はその事に対して、渇望に似た感覚を覚えるのだった。──自分が生きている間に追いつく事は難しいだろうけど、可能な限り目指していきたい所にあると。
何よりその月の民の中には勇美の憧れたる綿月依姫、そして自分を同志と呼んでくれる綿月豊姫もいるのである。故に勇美の高揚感は一入というものであろう。
そう勇美が心の中で意気込んでいる間にも、歯車は文字通り水晶体の機械と噛み合ったのである。後はこれを起動させてエレベーターを動かすだけだろう。
「後は動かすだけだね♪」
勇美は今しがた生命力を取り戻したかのようにブート音を出す水晶体を見ながらそう言い、そしてそれに触れたのであった。
するとその瞬間、水晶体が内部からキュルキュルとモーター音を出して稼働を始めたのである。後は、行き先を念じさえすれば目的の場所まで送って行ってくれるだろう事は勇美の意識の中に伝わってくるのであった。
「いざ、夢見鏡の世界へ!」
勇美はそう言ってボケてみせたが、些か一人ではやりがいの無い事だと気付くのだった。
あの世界ほど仲間が足手まといになる作品はそうそうないが、今の勇美は正に、仲間の大切さを思い知るのであった。
だが、今回は各自が一人ずつ動くのが的確な作戦だと言い聞かされたのである。ならば、勇美はそれに従うまでなのであった。
「やるっきゃ、ないよね」
そう自分に言い聞かせるように、勇美はいよいよを以てエレベーターを起動させたのであった。
◇ ◇ ◇
「はあぁ〜
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