第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第5話 三日月の塔 SIDE:I 後編
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、ボーイッシュなリグル・ナイトバグですら彼女も『私』だったりするからというとの事であった。
「どう? 私の苦労を分かってもらえた?」
「いや、正直共感出来ないよお前の主張には……」
そう言って少年風の玉兎は頭を抱えるのであった。そんな事どうでもいいのではなかろうかと。
だが、その言葉がいけなかった。勇美はそれを聞くや否や、ギロリと玉兎を睨みつけるのだった。
「何を! どうでもいい事とは何事か!? これは私にとっては死活問題なんだよ!」
「いや、そんな事で生死が関わっちゃダメでしょう?」
玉兎は至極真っ当な意見を勇美に突きつけた。そして、これ以上この変な人間と相手をしていても埒が明かないと思い、本題に切り出す事とする。
「お前が何を目的としているかは分からないけど、今この場に来たからにはこのまま好きにさせる訳にはいかないよ!」
そう言う玉兎であったが、彼女は断じて歯車の事は口にはしなかったのだ。さすがに清蘭や鈴瑚からも見られるように、任務に忠実な嫦娥管轄の玉兎である事が窺えるのだった。
勇美は、その事に感心や羨ましい感情がない交ぜになったものを抱きつつも、彼女もてっとり早く『結論』を出す事にしたのである。
「おめえはオラには勝てねえ、戦わなくても分かる」
「いや、その台詞は色々おかしい」
勇美のその突飛もない発言に、早速とばかりに玉兎はツッコミを入れた。
まず、女の子なのに『オラ』はどうかと。精々許されるのが『俺』であろう。
そして、そもそもこの台詞はパクりだという事であった。こういう局面でそういう台詞をチョイスする事に甚だ疑問を抱くのだった。
そういう言いたい事は多かったが、玉兎は一つの結論に至るのだった。それは。
「ボクがお前には勝てないって?」
それが論点であった。
嘗められたものだ。いくら自分が一般の玉兎とはいえ、たかが人間にそのような事を言われるとは。
それに、自分はそこそこ訓練を積んだという自負があるのだった。だから、自分がそう簡単に負けるとは思えなかったのである。
「ずいぶんと大口を叩くものじゃないか?」
だから、目の前の人間の態度には感に障る所があるのだった。そして、その台詞、そっくりそのまま返してやろうじゃないか、この人間と思うのであった。
だが、この少年風玉兎は気付くのが少々遅かったようである──既に彼女は勇美の術中に嵌っていたという事を。
「それじゃあ、覚悟はいいかい?」
そう言って玉兎は臨戦体制に入った。これに対して、勇美は身構える……ような事はしなく、代わりに彼女にこう言うのであった。
「ごめんね、まともに勝負してあげられなくて。こっちも急いでいるんだよ。また機会があったら……ね?」
「?」
そう意味ありげな言葉を紡ぐ勇美に、当然玉兎は訝るが、時既
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