第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第4話 三日月の塔 SIDE:I 前編
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のような球体が浮かんでいるものだけである。
そう、『浮かんでいる』のである。決して壁のような場所に埋め込まれて固定されているのではなく、正真正銘部屋の中心に宙に何らかの力で以てその位置を保たれているようだ。
そして、もう一つこの部屋には特筆すべき事があった。
確かに部屋に備え付けられているのはその球体だけであったが、問題は部屋の仕様そのものであった。
普通外部から部屋に入ればその視界は狭められるのが当然であろう。何せ、外部よりも狭いのだから当たり前である。
だが、このエレベーターは違っていたのだった。逆にこの部屋に入った瞬間、勇美の視界は一気に開けたのだから。
一体何が起こったのか? それは部屋に入ると、周りに塔の外の風景が広がっていたのである。
それは、屋外に床だけが存在しているような状態であった。つまり、その上でどこを見回しても完全に屋外にいるのと変わらない光景になっているのだった。
「すごいね……月の技術は……。SF映画の演出そのものだね……」
勇美は当然呆気に取られながら呟くのであった。そして、これは紛れもなく今、現実に起こっている光景である事を認めなくてはならないのだった。
勇美の興奮は冷め上がらないが、彼女は冷静に今の状態を認識していた。
それは、こうして『近未来的な』エレベーターの中に入ったはいいが、ここが今エレベーターとしての機能を発揮してはいない事であった。
「多分、部屋の中央の玉がエレベーターを作動させる装置なんだと思うんだけどなあ……」
勇美の読みは正しかった。この球体が正に、行き先の階を脳内で思い浮かべて作動させる、現代のエレベーターの階数ボタンの役割を果たす装置なのであった。
だが、現実は勇美の目の前ではその装置は作動してはいなかったのである。
このまま立ち往生していても埒が明かないだろう。そこで勇美は行動に移す事にしたのだった。
「マッくん、お願い!」
そう勇美が呼び掛けると、彼女の目の前に機械仕掛けの小動物のような存在が顕現したのであった。
その存在こそがこれまで主である勇美を幾度となく助けてくれた彼女の分身である、機械生命体の『マックス』だ。
そして、彼は勇美が依姫との契約により借りられるようになった神の力を注ぎ込む事で真価を発揮するのであった。
今回も正に、勇美によりその力が備え付けられようとしていたのである。勇美は、最早通例となった、神への呼び掛けを行う。
「『ヒドゥン』様よ、この状況を打破するためにその姿を現して下さい」
そう勇美が『いつものように』神に呼び掛けると、彼女の前にそれが顕現したのであった。
勇美が呼び掛けた神の名前は、『隠れる者』を示したものであった。その名が示す通り彼の姿は形容しがたいものであったのである。
その歪な神
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