第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第4話 三日月の塔 SIDE:I 前編
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にかまけて気を緩めている訳にもいかないのである。
何せ、自分は鈴仙やヘカーティアと共に重要な任務を任された者の一人なのだから。それも、勇美がこの世で最も敬愛する依姫からの命であるのだ。何としても成し遂げなければならないだろう。
その気持ちの景気付けに勇美はパンツを脱ごうとして……そしてやめてしまった。
「……何か違うね」
今この瞬間、勇美は何か空しさを感じたのであった。
今までは彼女がパンツを脱ごうとすれば、側にいた依姫や鈴仙が決まって止めに入っていたのだ。だが、今はそれらの者がこの場にはいないのである。
「うん。目標というものは、苦難があってこそ目指し甲斐があるって事だね」
それは違うと思う。断じてパンツを脱ぐなどというしょうもない事を目標にしてしまっては、全世界に存在する様々な目標という概念に対して失礼であり侮辱というものだろう。
要は勇美はパンツを脱ぐ事自体には重点を置いてはおらず、周りから止められる中でそれを遂行しようとする所に意味を感じているようであった。
そして、それらの事を脳内で噛み締めると、彼女はある事に気付き始めたのである。
「そっか。今は私一人なんだよね」
ここに存在するのはその事実なのであった。
今まではいつも側に依姫や鈴仙といった親しい間柄の人がいた。だが、今回の任務では勇美は今一人なのである。
心細くないといえば嘘になる。だが、勇美には不思議と不安はなかったのである。
「今も鈴仙さんやヘカーティア様が頑張っているんだから、私もちゃんとやらないとね」
離れた場所でも仲間が行動している。その事実が勇美の背中を後押しするのであった。
◇ ◇ ◇
そして、勇美は三日月の塔の中を練り歩いていた。目指すは結界を制御する月の中枢である最上階なのであるが、まずはそこへ行く為のエレベーターに該当する場所を目指さなくてはならなかったのだ。
そう、エレベーターである。月の技術を用いれば、そのような代物を造り出す事など造作もないのであった。
そして、勇美は見張りの玉兎に運良く見つからずにエレベーターへと辿りついていたのだった。続いて勇美はその部屋の中に入る。
「ここがエレベーターかぁ……」
そう呟きながら、勇美は部屋の中を見回したのである。
エレベーターがある事は豊姫から聞いていたので心の準備は出来ていた。それでも月でそのような代物と巡り合うのは勇美にとって驚くべき事であったが。
驚きも一入な所で勇美は部屋の隅々を確認していく。
そこは、さすがに月の産物であり、現代で見掛けるそれとは些か様相が違っていたのだった。
部屋には現代のエレベーターにあるような、行き先を指定する階数の書かれたボタンのようなものは一切存在しないのである。
あるのは、ただ部屋の中央に水晶
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