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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
7.104訓練分隊V
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7.104訓練分隊V
巧が考えた作戦は複雑なものではなく、むしろ古典的な陽動であった。相手は訓練された歩兵とはいっても装備はほとんど模擬刀のみ。戦うには近づかなければならず、もし巧を追撃したければそれは走り寄るほかにない。そして一方から近づくだけでは狙い撃たれるだけ。ならばいくつかの部隊で巧を囲むように追い立てるだろう。そこでまず罠を仕掛けたポイント付近まで逃げ、その後そこに留まって敵を引きつける。正面から来た部隊を足止めするために仲間から遠距離射撃で援護してもらう。そして一斉に掛かってきたところで罠を発動し一網打尽にする。そして罠にかかって統率を失っている残存兵を巧と仲間が掃討する。この作戦は相手の武装が近距離用のみであり、そんな隊の運用を相手の隊長がした経験がないからこそ通用する策であった。加えて巧たちを訓練兵だと侮ったことも大きいだろう。本当に警戒していればこんな単純な陽動に掛かるわけがない。
しかし結果として攪乱陽動は成功した。相手の本隊は地理把握を中断し巧を追いかけ、先遣隊は罠にかかって全滅。三小隊、約百人の脱落という憂き目になったのである。
◆
「どういうことだ!」
石橋の怒声が響きわたる。先行していた三小隊全滅。相手に被害なし。最悪の結果と言える。こんなことは石橋の想定外の出来事であった。訓練で、ハンデキャップがあったとは言ってもこの損害は本来なら負けに等しい。撤退すら考慮に入れなくてはならない損耗である。
「はっ、どうやら最初の訓練兵は陽動であったようです。事前に罠を仕掛け誘導したものと思われます。罠の種類はワイヤーと手榴弾を使った簡易なものでした。また敵の援軍もいたようです。通信機がないので情報の伝達に齟齬がありました。」
「くそ!舐め過ぎていたようだな。衛士志望のモヤシ共なんぞ大したことないと思っていたが…存外まともにやるようだ。」
「はい。加えてこのような装備で戦うことは想定してませんでしたから。接近するときに罠を使われたようです。」
「ふんっ、確かにそうだが言い訳にすぎんな。よし、大勢を立て直す!もうこんな醜態は晒さん。世間知らずの餓鬼どもに思い知らせてやるぞ!」
そう。こんな醜態はあってはならない。誇り高き帝国陸軍歩兵部隊が、よりにも寄って衛士志望の訓練兵ごときの陽動に掛かり一回の戦闘で三小隊を失うというこの上ない恥。到底許容できるものではない。
怒りに燃える石橋にもはや油断はない。104分隊の本当の試練はここからだった。
◆
敵の三小隊を打ち破り大打撃を与えた104分隊は戦勝ムードだった。あの屈強な兵士達を手玉に取り、こちらには損害はない。完勝と言っていい成果である。巧もその状況に酔っていた。大きなハンデがあったとはいえ、自分たちよりも遙かに熟練した歩兵たちをいとも容易く殲滅した。爽快
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