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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
7.104訓練分隊V
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。指令を受けたときに聞いていたことだったが、これまで一度も使われず、この数日間何の動きも察知できなかったことで頭から抜けていたのだった。そして田上が撃たれたのに気づき走り寄った二人に四人の模擬刀を持った陸上歩兵隊が切り掛かり、何の反撃も許さず無力化した。この歩兵たちはこの日の明け方、崖下の見張りが交代する隙を見計らって崖を登り、僅かに出来ている死角に身を隠していたのだった。単純なことだがこれは驚くべき事態である。見張りが交代する僅かな時間で崖を登り、その見張りの死角に数時間へばりつく。並の体力では到底不可能なことである。
しかしだからこそ可能になった奇襲。そしてそれは成功し、今や北の高台は陸上歩兵隊に占拠された。しかも巧たちの人数は七人に減らされ、上からと下から、合計350人の敵に包囲されていることになる。絶望的な状況であった。


田上に連絡が伝わらず、他の隊員からも連絡がない。予想外の事態に巧は肝が冷える思いだった。最悪の事態である。待機組がやられたとなると、拠点は占拠されたと考えた方がいい。眼前の敵はとりあえず撃退したが、それでもまだ周囲に潜んでいる可能性が高い。そして残りの部隊はおそらくもう高台に上がっているだろう。つまり完全に包囲された状況。こちらの火力は減り、相手は損害を出していると言ってもまだまだ大半は健在。初日に100人、今回で50人倒したとして相手は350人。こちらは7人。人数比は振り出しに戻ったところだが、拠点を奪われ包囲されている状況。それに射撃主体の訓練兵にとっては数人の損害はそのまま戦力の低下につながるのに対して、敵の損耗は戦闘には影響しないほどのものだ。索敵範囲は狭まるだろうが、戦闘時には500人だろうと350人だろうと人数比が圧倒的であることに変わりはない。
しかしだからと言って立ち止まっていることはできない。田上がやられたとなれば、リーダーシップを取らなくてはならないのは巧だ。
「田上達はやられたと判断する。俺たちは今7人。この人数で生き残らなくてはならない。俺が指揮を取ろうと思うが反対する奴はいるか?」
「「「…」」」
つい1時間前までは想像もできなかった事態にパニックになっている他の隊員から反対意見はない。この状態でまともに戦闘出来るとは思えないが、それでも巧はやるしかなかった。



 一方、高台を占拠した石橋は笑いが止まらなかった。初日にあの屈辱を受けてから二日、徹底して演習エリアを探索した。二日目で訓練兵の拠点は見つけたが、攻撃は一切せずに周辺の探索を行い、同時に104分隊の行動パターンを分析し続けた。そして索敵が終了し、見つけた罠は片っ端から解除し、準備を整えたうえで奇襲をかけた。初日の意趣返しの陽動作戦が面白いように決まり、そして今から生意気な衛士候補生共をいたぶれる。
「立て直す隙
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