第一章
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心が豊かであれば
アメリカテネシー州メンフィスでホームレスをしているアンソニー=ロジャースはかつてはアーティストだった。
だが今はホームレスをしている、髭の初老の男性だ。彼はいつも白い毛の優しい顔立ちの大型犬と共にいた。
そうしてだ、いつもホームレス仲間に話していた。
「ボボがいるとな」
「その犬と一緒ならだな」
「あんたは幸せだな」
「そうだな」
「俺は確かにホームレスさ」
社会的に困った立場とされる者だというのだ。
「けれどこいつがいるとな」
「寂しくない」
「家族がいるから」
「それでだな」
「ああ、それでな」
さらに言うのだった。
「辛くないさ」
「そうなんだな」
「あんたは無欲だな」
「家族がいればいいって」
「それで満足してるなんてな」
「自分でもそう思うさ、欲はな」
それはというのだ。
「俺にはこれといってな」
「なくてな」
「ボボと一緒ならだな」
「それでいいな」
「それで満足さ、これからもこいつと一緒だよ」
「ワンッ」
ボボも鳴いて応えた、アンソニーはそんな彼を見て優しい笑顔になった。
だがある日だった。
ボボがいなくなった、それでアンソニーは慌ててだった。
近くの動物保護センターに駆けこんでスタッフに話した。
「うちの犬がいなくなったんだ」
「どんな子ですか?」
「それはな」
ボボのことを詳しく話した、そうして言った。
「絶対に見付け出してくれ」
「はい、任せて下さい」
スタッフも彼に確かな声で答えた。
「必ずです」
「ボボを見付けてくれるんだな」
「そうさせてもらいます」
「ボボは家族なんだ」
アンソニーの言葉は切実なものだった。
「だからな」
「はい、必ずです」
「見付けてくれよ」
アンソニーはボボの写真も出して貼り紙も作ってもらってだった。
メンフィスの各地に貼ってだ、そのうえで。
多くの人に情報提供を頼んだ、彼自身街を必死に歩き回って探した、だがそれでも見付からなくてだった。
彼は焦っていた、それで友人達にも話した。
「無事であってくれ」
「そう思うな」
「そう思うばかりだな」
「あんたにとっては」
「辛い目怖い目に遭っていないか」
それが心配でというのだ。
「心配で仕方ない」
「きっと無事さ」
「絶対に見付かる」
「それでまた一緒に暮らせるさ」
「ああ、そうなって欲しい」
実際にとだ、こう言うばかりだった。そして必死に探す中で。
施設に連絡があった、それでスタッフがアンソニーに連絡した。
「貼り紙を見た人がそっくりの犬を自宅近くで見て」
「それでか」
「連絡してくれました、そしてこちらに保護されました」
「ボボなんだな」
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