暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第77話:種は蒔かれた
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は、何とも無いよな?」
「え?」
「どこか調子悪かったりしないか? 気分は大丈夫か? 何か、何時もと違う、変だと感じる事は無いか?」
「待て待て落ち着け。一体どうしたんだ?」

 矢継ぎ早に問いを投げ掛ける奏に、颯人は彼女をベンチに誘導して座らせながら宥めた。今の奏は明らかに彼女らしくない。

「ほれ、とりあえずこれでも飲んで落ち着けって」
「あぁ……」
「…………それで? 一体何があったんだ?」

 ベンチに座り、颯人が持ってきたジュースを口にして少し落ち着きを取り戻した奏に、颯人が改めて何があったのかを問い掛ける。
 奏は先程ソラと出会った事などを話し、颯人の死の可能性について話そうとした。

 しかし、いざ話そうとするとソラの事が口から出なかった。誰かと出会った事は覚えているが、その相手がソラであるという事がどうしても思い出せなかったのだ。まるで記憶に靄が掛った様に、ソラとの会話の記憶が朧気で口から出てこない。

「え……っと、あれ? アタシ、何が――――?」
「どうした? 大丈夫か?」
「わ、分かんない。分かんないけど、すっごく不安になったのだけは覚えてる。颯人が居なくなるんじゃないかって……死ぬんじゃないかって、怖くて、それで――――」

 気付けば奏は自分で自分の体を抱きしめていた。そうでもしなければ、不安に押し潰されてどうにかなってしまいそうだったのだ。

 そんな彼女を、颯人は優しく抱きしめた。勿論周りに誰も居ない事を確かめ、認識阻害の魔法を使用した上で、だ。

「大丈夫だって。一体何があったのかは知らねえけど、そんなに不安がるなよ。俺まで不安になっちまう」
「颯人……」
「それでもどうしても不安で仕方ねえってんなら、今から奏に元気が出る魔法を掛けてやろうと思うんだが……どうする?」
「元気が出る魔法?」
「あぁ。俺が奏だけに使う、奏にしか効かない魔法だ」

 そう言って颯人は奏の顎に手を当てクイッと持ち上げる。それだけで奏は颯人が何をしようとしているのかに気付き、ハッとした顔になった。
 奏は顎を持ち上げられて僅かに逡巡を見せたが、次の瞬間には彼がしようとしている事を受け入れるように目を瞑った。

 颯人は奏が目を瞑ったのを見て、柔らかな笑みを浮かべるとそっと顔を近付け、その唇に優しくキスをしたのだった。
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