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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission3 テミス
(1) トリグラフ中央駅~マンションフレール302号室
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「お前の一言でさらに抉られたわ…」

 ルドガーはパネルに最後の数字を入力して、部屋のロックを解除した。





 ルドガー手製の夕飯を馳走になりながら、ユティたちはおのおのがストリボルグ号に乗っていた目的を打ち明け合った。


 まずはエル。謎の集団に襲撃された父が、最後に残した言葉が「トリグラフ中央駅10時発の列車に乗れ」とのものだった。そして、カナンの地を目指せと。列車で行ける聖地とはこれいかに。

 ジュードは元々列車にもアスコルド記念式典にも用はなく、式典を取材するはずだった友人の記者のドタキャンで代打をさせられたらしい。

 一番イタイのがルドガーだ。ルドガーはあの日から駅の食堂で働くはずだったが、アルクノアのテロを避けるため、やむをえず列車に乗って戦いに巻き込まれたのだ。おかげで勤め先はクビである。

「ルル、ルドガーってサチうすいよね」
「ナァ〜」
「そもそもどっかの女の子が痴漢冤罪なんてマネしてなきゃ、事態はもっとスマートだったんデスケドね」

 ルドガーは頬杖を突いてあらぬほうを見やりながらも、特定の一人狙いの独り言を言った。

「エルってばヒドーイ。チカンの冤罪って借金の連帯保証と同じくらい、その人の人生と尊厳に関わる大問題なのにー」
「だ、だって、だってっ、エル、列車乗らなきゃいけなかったんだもんっ」

 どんどん涙目になっていくエルのほっぺをビシバシ指で突くユティ。

「そう言うユティは――」
「自然工場アスコルドの撮影」
「……だよな」

 目的とは全く関係ない、用意された回答を述べる。

「ってちょっと待て。お前、記念式典に行くのにスピアなんて危なっかしい物持ち歩いてたのか?」
「アレはワタシの一部だから。どんな時も一緒」
「式典の手荷物検査で絶対取り上げられたと思うぞ」

 しまった。確かに式典という場に武器の持ち込みはふさわしくない。ましてやこの時代はアルクノアのテロが横行している。一般人の武器携帯はあらぬ疑念を招く。
 設定に矛盾を来した。気づくか――ユティはレンズの向こうのルドガーとジュードを素早く観察する。

「その辺に気づかないのは、ユティらしいというか、何というか」

 ジュードが苦笑しつつフォローを入れた。ルドガーも肯いている。気づかれずにすんだ。


 直後、ノック音がして部屋の玄関ドアが開いた。


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