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ユア・ブラッド・マイン 〜空と結晶と緋色の鎖〜
第9話『合流』
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綺麗に切られてたのは気になるかな」
「綺麗に切られてた?」
「うん。 道を封鎖してた方は斧でも使ってへし折った見たいだったけど、森の中のはくりぬいたみたいに綺麗だった」
「くりぬき……なるほど……」

 玲人のみた怪鳥はほんの一瞬で地面に大穴を開け、飛び去った方角から断続的に木が倒れる音を響かせていた。 無関係、と思うほうが短慮だろう。

「森の中の方は別口かも」
「……何か見たようだな」

 玲人は製鉄師の男との交戦中に遭遇した怪鳥について2人に説明する。 怪鳥が通った後には大きな穴が残るということ、怪鳥は鉄脈術をも貫いたこと。 そして、怪鳥がカセドラル・ビーイングと呼ばれたこと。

「かせどら、なんて?」
「カセドラル・ビーイングだ。 その反応だと輝橋は知らなさそうだな。 燕さんは何か……燕さん?」
「馬鹿な、ありえん。 この山にレリックはないはず……」

 レリック。 また知らない単語だ。
 この反応だと、燕さんには心当たりがあるらしい。 もう少し詳しく聞きたい所だが……

「す、少し待て。 事情が事情だ。 宇宙(そら)と話す時間をくれ」

 そういうと、燕さんは寝室にいた武蔵野と連れだって外に出て行ってしまう。 残された玲人たちにできることといえば、眉を顰めて目を見合わせることくらいか。

「ギバちゃんせんせー、嘘つけないもんね」
「ま、まぁそこが燕さんのいいところでもある」

 なぜ取り繕うようにフォローを入れているのか。 あまりに分かりやすく取り乱した燕の様子を見て、玲人と輝橋は逆に肩の力が抜けていた。
 そうなると、今まで気を張っていただけに一気に疲労感に襲われる。 輝橋の提案した小休憩を断る理由はなかった。

「んで? どう思うよあの反応」

 じゃんけんに負けた輝橋が2人分のコーヒーを用意しながら訪ねてくる。 余談ではあるが、輝橋には知ってか知らずか最初にチョキを出す癖がある。 故に、じゃんけんにおいては写真部最弱である。

「そうだな……まず心当たりがあるのは間違いないだろう。 それもおそらく機密事項級の、だな」

 普通に知っているだけならば、今こうして武蔵野と対応を相談することもないだろう。 しかし、こうして待たされているということは、今のような緊急事態下においても簡単に口に出せないような心当たりがあると考えるのが妥当だ。

「まぁ冥質界(カセドラル)だもんなぁ……鬼が出るか蛇が出るか」

 やはり輝橋も連想することは同じらしい。
 冥質界。 これの説明は少し面倒だ。 何せまずは《三層世界論》なんていう小難しい話から始めなければならない。
 この理論を平たく説明すると、今玲人たちが存在しているこの世界は三つの層に分けることが出来るらしい。

 
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