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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第一章 〜再会と出会い〜
その九
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に渡ってきてしまった人々がいた。それらの現象をこの国の伝承になぞらえて“神隠し”と呼んでいる。柳哉の母、玲亜もまたその一人であった。

「稟や楓は覚えてないか? 母さんのトレードマーク」

「ええと……」

「あの、もしかしてバンダナですか?」

「そ、耳を隠すために」

 柳哉の父、草司も驚いただろうが、害は無いと判断したのだろう。当時の玲亜が美少女だったことも関係しているだろうが。ちなみに“玲亜”とは草司の考えた当て字である。

「でもすごいですね。人族の方でこれだけの魔法具を作れるなんて」

 ネリネが感心したように言う。やはり魔法に関する知識や技術の面では人族は劣る。その中でもこれだけの魔法具を作れるのは相当な事だ。

「まあ元々父さんは手先の器用な人だったし、母さんからのアドバイスもあったみたいだからな」

 実際草司は“開門”前から魔法具らしき物を趣味で自作していたようだ。

「この時計は父さんが俺のためだけに作ってくれた物でな、前は魔法を使う時には欠かせなかった。今は使わなくても制御できるけどな」

 そう言って時計をしまう柳哉。

「ねえ柳ちゃん」

「どうしたんですか?」

 ずっと黙っていた亜沙が口を開いた。

「小さい頃、魔力制御ってうまくいってなかったんだよね?」

「ええ、そうですね。よく体調を崩して学校を休んでましたし。それで母さんを恨んだこともあります。どうしてこんな体に産んだんだって」

 今はそのことを後悔してますが、と苦笑い。

「……っ、魔法が嫌いになったりしなかった?」

「そうですね。結構早い時期から魔力制御の訓練は始めてましたけど、完全にサボってた時期もあります」

「でも今は普通に魔法を使うんだよね?」

「あくまで必要と判断した時だけですけどね」

 妙に食いつく亜沙に少し戸惑いながら答える。稟達も戸惑い気味だ。いくら亜沙が魔法嫌いとはいえこれはちょっと、なレベルだ。

「どうして?」

「どうして、とは?」

「嫌ってたんでしょ?」

 ふむ、とあごに手をやる柳哉。

「逆に聞きますが、時雨先輩にとって“魔法”とは何ですか?」

「人族であるボクにはいらない物、不必要な物」

 即答。どうやら彼女の魔法嫌いは相当のもののようだ。

「柳ちゃんにとっては?」

「あの、亜沙ちゃん?」

 声を掛けるカレハだが、

「ごめん、カレハ。ちょっと黙ってて」

 と言う亜沙に口をつぐむ。

「俺にとって魔法とは道具(ツール)ですね」

道具(ツール)?」

「ええ、使い方次第でどうにでもなる。それこそ守る力にも、奪う力にもなる物です。そして……」

「そして……?」

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