第二章
[8]前話
ベルのことをあらためてどうしようかと思った、夫は家に帰ると妻に言った。
「誰がベルを捨てるか」
「ええ、そうよね」
妻も言った、横にはまだ赤子の娘が揺り篭の中にいるがベルはその彼女を優しい目で見守っている。そのベルを見ながら言うのだった。
「家族だから」
「そんなことするか」
「そうよね、けれど」
「ベルのトラウマになっているからな」
「そうは簡単にはいかないわ」
「そうだな、じゃあどうするか」
夫婦でじっくり考えた、それでだった。
夫が妻にこう言った。
「じゃあ夫婦の寝室にベルのベッドを置いて」
「夜は一緒に寝る様にするのね」
「一緒に寝て何もしないならな」
それならというのだ。
「ベルも僕達を信頼して安心出来るだろ」
「だからなのね」
「そうしよう」
「そうね、それならベルも安心するわね」
妻も頷いた、そうしてだった。
実際にそうするとだった、ベルは。
以後彼は毎日落ち着いて寝る様になった、夫婦はその彼を見てほっとした。
「よかったな」
「ええ、ベルのトラウマがなくなってね」
「それで安心して寝られる様になって」
「本当によかったわ」
「もうベルは捨てられない」
「ずっと私達と一緒よ」
「だったらこれからも」
それならとだ、夫は言った。
「寝る時も」
「一緒よ」
「それじゃあ今夜も」
「ベルが一緒よ」
こう言ってだった、夫婦はその夜にもだった。
寝る時にベルに声をかけた。
「じゃあ寝ようか」
「今日も一緒にね」
「オンッ」
ベルは明るい声で応えた、そうして部屋にある犬用のベッドの上で気持ちよく寝た。もうトラウマは何もなかった。
そして後日夫婦はシェルターの人からベルの前の飼い主達の話を聞いた。
「そうか、二人目の子供が産まれたら」
「最初の子、ベルを捨ててまで育てようとした子を育児放棄して」
「それを親戚に訴えられて真剣箒させられたんだな」
「二人の子供の」
「犬を裏切る様な人は人も裏切る」
「自分の子供ですら」
「そうするんだな」
夫は妻に遠くを見る目で話した。
「そしてその報いは必ず受ける」
「そうなるのね」
「それが世の中なんだな」
夫婦でその真理を話した、そして自分達はそんな人間には絶対にならないと夫婦であらためて誓いベルにも娘にも家族として愛情を向けるのだった。
夜寝ない理由 完
2021・4・21
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