第七十話 最後の休日
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
時は経ち、王太子妃カトレアは17歳になり、魔法学院三年生に進級した。
トリステインでは大寒波の傷は癒え、人々には平和な日々が訪れていた。
この日、カトレアは休日を利用して、友人のミシェルと遠乗りに出かけていた。
「この間、景色が綺麗な場所を見つけたので、前々からカトレア様に見せたかったのですよ」
「そうなの、とっても楽しみだわ」
カトレアは学院から借りた馬で、ミシェルは使い魔の巨馬のグリーズで併走しながら目的地へ向かった。
ミシェルにとって、カトレアと二人きりの遠乗りで、今日という日を待ちわびていたのだが、そんなミシェルを不愉快にさせる者が、カトレアら二人の後ろから迫っていた。
「おお〜い! 待ってくれ〜〜!!」
「げ、グラモン……と、ワルド卿」
ミシェルはげんなりして後ろを振り返ると、5メイルの大きな亀と少しは離れてワルドがグリフォンに跨って飛んでいた。
巨大な亀の甲羅の上に高価な椅子が設置されていて、ジョルジュがその椅子に座ってカトレア達に手を振っていた。
ワルドはグリフォンを、グラモン家の三男ジョルジュはリクガメと呼ばれる陸棲の亀を使い魔として召喚した。
亀を連想すると動きが遅いと思われがちだが、ハルケギニアのリクガメはかなり素早く。軍用として使役されたりする。
ジョルジュはリクガメから降りると、地面に片膝を付いた。
「カトレア様。どうか、この私めも同行を許可していただけませんか?」
「カトレア様、この様な軟弱者の言葉など聞いてはいけません」
「ミス・ネル。君には聞いていないよ」
「アンタが、とっかえひっかえ女を物色してるからカトレア様が心配なのよ!」
「とっかえひっかえとは酷いな。全ての女性に愛を振りまいているんだ」
「よくもまあそんな事言えるわね!」
ミシェルとジョルジュが言い争いを始めた。
「王太子妃殿下、どうなさるので?」
外野だったワルドがカトレアに聞く。
「そうねぇ、許可しましょうか」
「……カトレア様がそう仰るのでしたら。私は何も言いません」
「ありがとうございます!」
ジョルジュのリクガメがカトレア達二人の近くによると、ジョルジュの座る豪華な椅子には、造花の薔薇が散りばめられていて、満遍なく振りかけられた香水の臭いが離れたカトレア達の所にまで漂ってきた。
「どうでしょうか、僕のアレクサンドラは、とても美しいでしょう?」
「つぶらな瞳がとっても可愛いと思いますが、薔薇の香りがとても……何と言いましょうか……」
「むせ返るほどの薔薇の香りってどういう事よ? ……はっきり言って臭いのよ!」
カトレアは気遣うように、ミシェルはストレートに、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ