第一話 卒業してその十九
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「信用したら駄目よ、咲ちゃんのことを親友だとか言っても」
「口だけね」
「それで自分の都合が悪くなったら」
「逃げるのね」
「そうするからね」
「信じたらいけないのね」
「それどころか自分のしたことの責任押し付けて」
そうしてというのだ。
「逃げるから」
「信じたら駄目で」
「近寄って来ても無視してね」
「そうしないと駄目なのね」
「この二種類の人達もね、まあ叔父さんと叔母さんもうちのお父さんとお母さんもそうした人達じゃないけれどね」
愛はこのことは笑って話した。
「ただ叔父さんは何か埼玉県嫌いみたいだけれど」
「あれっ、そうなの」
咲は父のこの話にはきょとんとした顔で応えた。
「お父さん別に」
「叔父さんこの前法事で西武ライオンズの話が出た時にね」
愛はこのことは小声で話した。
「眉曇らせたのよ」
「そうだったの」
「ええ、それで私思ったのよ」
「お父さん埼玉県嫌いって」
「叔父さんはヤクルトファンよね」
「うちは三人共野球はそうなのよね」
ヤクルトだとだ、咲は答えた。
「お姉ちゃんは阪神よね」
「そうよ、だからトラ柄の服も持ってるわよ」
「大阪のおばさんみたいね」
「大阪はヒョウ柄だからまた違うわよ」
「そうなの?」
「ええ、お父さんもお母さんもヤクルトだけれどね」
「うちの一族巨人ファンいないわね」
「だって悪いチームだから」
これに尽きる、巨人程邪悪を極めたスポーツチームはこの世に存在しない。戦後日本のモラルと知性と品性の絶望的な低さの象徴と言える存在であろう。
「だからね」
「親戚も皆巨人嫌いなのね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「あんなチーム応援するとか願い下げよ」
「親戚皆そうした考えね」
「それで叔父さんはね」
咲の父はというと。
「実際埼玉県の話題しないでしょ」
「住んでる足立区のすぐ傍なのに」
「そうでしょ」
「東京のお話多いわね」
「東京生まれだしね」
「うちは元々東京だしね」
「ひいお祖父ちゃんからだったかしら」
咲は記憶を辿って述べた。
「戦争終わってから復員してこっちに来て就職して」
「ずっとだからね」
「皆東京生まれでお父さんもで」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「東京のお話はするけれど」
「埼玉しないでしょ」
「確かにね」
「だからね」
「お父さん埼玉嫌いなの」
「そうかもね、まあそれ以外は」
これといってという口調でだ、愛は咲に話した。
「別にね」
「これといってなのね」
「おかしくないから」
「お父さんもお母さんも信じていいのね」
「親が信用出来たら」
それならというのだ。
「それだけで違うでしょ」
「うん、若し最悪な親だったら」
「どうしよう
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