第二章
[8]前話
ジャングルの中に入った、そのうえで一匹のチンパンジーを見るとすぐに彼に対して声をかけた。
「ボンゾ、これまで頑張ったわね」
「キイッ?」
「もう大丈夫よ」
「キイ・・・・・・」
ボンゾと呼ばれたチンパンジーはエステルが手を差し出すとだった。
笑顔になって彼女に抱き付いた、エステルは彼を保護するとすぐに彼を連れて島を出た。この時もジャーメインにこれまでボンゾを守ってくれたことに感謝の言葉を述べた。
すぐにボンゾのことから動物実験やその後の動物への待遇についての批判や議論が起こり彼の名前を冠した救助活動を行う団体も設立された、ボンゾはエルテルの傍で孤独から解放された生活を送ることが出来る様になった。
だがそれでもだった、エステルは。
共に活動をする人達に暗い顔で話した。
「ボンゾは助けられましたが」
「それでもですね」
「まだ動物実験は行われていて」
「その後の無責任な対応もありますね」
「平気で捨てたりしますね」
「実際ボンゾを実験に使っていた施設も責任はないという態度ですし」
「はい、この問題は根が深いです」
こう言うのだった。
「ですから」
「これからもですね」
「この活動を続けていかないといけないですね」
「ボンゾの様な生きものを少しでも減らす為に」
「その為に」
「そうです、ボンゾは他の生きものの様な暮らしは出来ません」
とてもというのだ。
「生まれてずっと実験に使われるだけでしたから」
「いつも酷い目に遭って」
「虐待の様な目に」
「命を失う危険もありますか」
「その中で苦しんで」
「それで用済みとみなされると捨てられて」
「そんな子です、ですが命があります」
このことは変わらないというのだ。
「ですから」
「そうですね、命があります」
「命は大切にしなければありません」
「そのことを忘れてはいけません」
「ですから訴えて動いていきましょう、ボンゾ安心してね」
エステルは共にいるボンゾにも声をかけた。
「貴方みたいな子を少しでも減らしていくからね」
「キイ・・・・・・」
ボンゾはエステルのその言葉に頼み込む様に鳴いた、そうしてだった。
彼女が優しく声をかけて話し掛けると信頼している目で応えた、それは心から信頼している目だった。エステルはその彼を見てその信頼に応えようと決意した。
孤独なチンパンジー 完
2021・4・18
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