暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第76話:ベッドの上の彼女
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レナに、ソーサラーも心なしか嬉しそうに小さく息を吐く。
「本当に美味しい……この味、子供の頃にも食べた事のある味です」
それは単純に故郷で何度も口にしたという意味ではない。
マリアとセレナの幼少期はその多くをF.I.S.の施設、通称『白い孤児院』で過ごした。2人の様にシンフォギア適性があり、同時にフィーネの魂の器となり得る憑代候補者を集めた施設だ。
そこにはセレナ達の様な少女は勿論、少年も集められていた。本来なら女性しか扱えないシンフォギアを、男性でも扱えるようにならないかと言う実験も行われていたのだ。
料理を綺麗に平らげ、食後にと出された紅茶を飲んだところでセレナはふと思い出した。
その施設に、マリアやセレナと親しかった少年が1人居た。少年は2人と同じウクライナ出身で、故郷を懐かしむ2人の為にナスターシャ教授に頼み込んで食材を用意し故郷の料理を再現しそれを2人や、他の施設の子供達にも振舞っていた。
厳しくも子供達に対して慈悲の心を持ち合わせていたナスターシャ教授は、彼の気持ちを汲み出来る限りで食材などを用意し調理設備を使わせてくれたのだ。
少年は何でも元々親が料理人だったとかで、子供の頃から親の料理を真似て自分でも簡単なものから作っていたらしい。
飽く迄実験体である少年にあまり好き放題させる事は出来なかったらしく、彼が料理の腕を振舞ってくれた回数は決して多くは無かった。だがその少ない回数の中で、彼の料理からはセレナ達を満足させようと言う熱い情熱を感じた。
そしてそれは、今も感じていた。そう、今し方平らげた料理からだ。単純な郷愁だけでなく、子供の頃に感じた情熱の味と近いものをセレナは感じたのだ。
「ソーサラーさん……貴方は――――」
セレナが何かを訊ねる前に、ソーサラーは食器を片付けると彼女の頭を優しく撫で口を噤ませた。彼女が口を閉じたのを見て、ソーサラーは踵を返し部屋から出ていく。その歩く速度は心なしか入って来たよりも早い。
「あ、待って――」
引き留めるもソーサラーは振り返りもせず部屋から出て行ってしまった。セレナは彼の背に向けて伸ばした手をゆっくり下ろし、先程彼が撫でた部分に手を当てた。魔法使いとしての鎧越しだが、そこからは確かな温かさを感じた。
その温かさを思い出し、そしてその少年の事を思い出し、セレナは嘗て自分達と親しかったその少年の名を口にした。
「ガルド、君……」
***
セレナの部屋を出たソーサラーは、エアキャリア内を1人歩いていた。差し当たって目指すはキッチンだ。先程片付けた食器を洗わなければならない。
しかしその足取りは部屋を出た時に比べると遅い。気のせいか、肩も落ちているように見える。
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