暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第76話:ベッドの上の彼女
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お世辞にもこのエアキャリア内は快適とは言い難い空間だ。絶唱の後遺症でベッドから出られないセレナに、ここでの生活は負担が大きいだろう。
 だが彼女を残していくという選択肢は出来なかった。米国が彼女を人質に取るかもしれないし、何よりもマリア自身がセレナと離れたくなかったからだ。

 唯一の血縁であるセレナの存在が、今のマリアの心の拠り所となっているのである。
 妹であり最早戦える体ではない、有り体に言ってしまえば庇護されるべき存在に縋る。マリアはそこに己の弱さを自覚し、そして6年前に身の危険を冒してまでマリア達を守ったセレナの強さと自分を比較して心に影を落としていた。

(あの時、セレナは危険を顧みず1人で皆を守ってみせた。あの魔法使いが来てくれなかったら、今頃…………。それに対して、私は強くなれるの? あの子のみたいに皆を守れるように…………)

 考えがどんどんネガティブな方向へと流れていく。これではまずいと、マリアは首を振って迷いを振り払い、自分にこれではいけないと言い聞かせた。

「駄目ね、余計な事を考えてる場合じゃないわ。少しでも強くなる為、この槍を振るわなきゃ……」




***




 マリアがシミュレーターで訓練を開始した頃、セレナの部屋を訪れる者が居た。ソーサラーだ。

 彼が部屋に入ると、セレナはマリアに向けたのと同じかそれ以上の笑みを彼に向けた。

「あ! ソーサラーさん!」

 彼の訪問にセレナが嬉しそうな声を上げると、彼は手を軽く上げ応え、次いで魔法でセレナの為の食事を用意した。
 日がな一日を寝たきりで過ごさざるを得ないセレナにとって、数少ない楽しみの一つである。

〈コネクト、ナーウ〉

 ベッドテーブルの上に広がる食事に、セレナが目を輝かせた。

「わぁ! 今日も美味しそう! 何時もありがとうございます、ソーサラーさん!」

 笑顔で感謝してくるセレナに、ソーサラーは無言で頷く。仮面で顔は見えない筈だが、その下の素顔は笑みを浮かべているのがセレナには分かった。

 笑みを浮かべながら、セレナはベッドテーブルの上に並べられた料理を見た。そこに広がるのは、彼女と彼女の姉であるマリアにも馴染みのある故郷の料理ばかり。
 ボルシチ(実は発祥はウクライナ)にピロシキ(ロシア料理だがウクライナでもポピュラー)、それに甘いジュースの様なウズヴァール。

 出来立ての温かな料理の湯気と香りが弱った体の食欲を呼び覚まし、生きる気力を奮い立たせる。
 早速セレナはスプーンを手に取り、ボルシチを掬い口に運んだ。野菜の甘みや旨味が凝縮したスープに、セレナの体が喜びスプーンを掬う手が止まらない。

「美味しい……美味しいです!」

 世辞でも何でもなくそう告げるセ
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