最終章:無限の可能性
第290話「イリスの本心」
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たから、そう思ったんですよ。私からすれば、元々は一つでしたから、あまり気にしていませんでしたが」
欠片のイリスは、本体のイリスを“理解を拒んだ場合の自分”と捉え、それもまた自分自身だと思っていた。
対し、本体のイリスは欠片の方を“自分ではなくなった誰か”と捉えた。
その違いが、許す許さないの境界線だったのだ。
「貴女が自覚した所で、もう一つの悩みを解決しましょうか」
「もう一つ……あ……」
「そう。私は神として間違っているのか、です」
イリスが吐露した最初の独白。
イリスが神としての生き方しか知らなかったが故の悩みだ。
「そもそも、知識の前提が違ったのです。貴女は……というか、私もつい先日まで知らなかったのですが、神界における“神”は便宜上の呼称に過ぎません」
「それは……“天使”と同じように?」
「はい。“性質”を持ち、その概念などを機能させるための機構。それが“神”としての私達です。そこに人格などは加味しません」
欠片のイリスも、優輝の中にいなければ知らなかった事だ。
優輝の知識をいくつか知ったからこそ、欠片のイリスも“答え”を出せた。
「そして、神界における私達は、他世界での人間と立場は同じです。傍から“性質”を見れば、それは確かに“神”に思えるでしょう。ですが、神界では普通です」
「それは……確かに」
特に呼称する言葉がなかったがために、神と名乗っていただけなのだ。
神界に生きる生命という意味では、人間と何も変わりない。
「つまり……“神”としては、間違っていません。ですが、神界に生きる生命としては、些か自分を縛りすぎ、という事ですね」
「……ふふ、なんですか、それ」
「ぶっちゃけ、貴女は確かに“闇の性質”らしくあった。むしろ、らしくあり過ぎたんですよ。もっと自由に生きて良かったのです」
“闇”というのは、どうしてもマイナスのイメージが付属する。
そのため、“闇の性質”の神は支配や悪に傾倒しがちだ。
それらを律するという役割と思って善神であり続ける神もいるが、基本は悪神だ。
イリスもその例に漏れずに“闇”を振りまいていた。
「普通の、それこそ人間のように自由に生きて、恋して、それでも良かったんです」
「っ………」
気が付けば、イリスは涙を流していた。
表面上は平静でも、“性質”に縛られていた事は負担だったのだ。
欠片のイリスも、自分を慰めるようにイリスを抱いた。
「“神だから”……そんな風に、縛られる必要なんてなかった」
「はい。……私達は、もっと自由で在れます」
“ストン”と、腑に落ちる。
自分と、もう一人の自分。お互いの言葉が、染み渡るように心を落
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