始まりから夏休みまで
☆話はじっくりベッドの上で聞かせてもらう話。
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「絵を描いてるお栄ちゃんの後ろ姿を見てたら…また描けるかもって思ったんだ。それで昨日…同じようにペンを買ってきたワケで…。」
「あぁ。」
そういうことか、と納得した顔をする。
昨日買ってきたものはお栄ちゃんへのプレゼントなんかじゃない。
正直に言うとそれは、僕のだ。
「そこまで言うと、気になってきたナ!」
「何が?」
「マイの絵。一体どんなもんか見てみたいのサ。」
肩をぴったりとくっ付けて寄り添い、お栄ちゃんはなんだか嬉しそうに言った。
「描けるようになったら、一番におれに見せとくれ!おれが最初に、マイの絵が見たいんだ。」
そう言い、お栄ちゃんは立ち上がった。
「おれはもう上がるヨ。これ以上浸かってたらのぼせちまう。」
「そっか、じゃあ僕も上がるよ。」
2人で浴槽から上がり、温まった身体をバスタオルで吹く。
「…。」
なんだか、身体が軽くなった気がする。
お栄ちゃんに全部打ち明けたからかな?
そうでなくても、僕は前の自分とは何か違う気がしてならなかった。
「じゃあお栄ちゃん。」
「うん?」
「描いてみる。僕、頑張るよ!」
?
「マイ…無茶しなくていいんだぞ?」
「ううん、大丈夫」
お風呂から上がり、それから僕達は作業部屋へと向かう。
机の上にあるスケッチブックを目の前にし、僕は恐る恐る鉛筆を手に取った。
「…っ。」
文字を書くのならなんの支障もない。
でも絵を描こうとするならば、刻まれたトラウマは嫌なことを思い出させてくるんだ。
「…。」
鉛筆を持った右手が震える。
真っ直ぐな線すらまともに描けないまま、僕は鉛筆の先を画用紙に付けた。
「…う、うぅ。」
後ろでお栄ちゃんが心配そうな顔をしてるのが分かる。
でも、お栄ちゃんは僕の絵を見たいって言ってくれた。
だったら見せたい。そしてまた戻りたい。
あの頃の、絵を描くことが大好きだった僕に。
「は…はぁ…はぁ…っ。」
嫌な汗が浮き出る。
呼吸が乱れる。
フラッシュバックする、あの時の光景
こっちは勉強してんのによ。お前はお絵描きごっこですか。
知ってるか?お前みたいなやつはニート予備軍って言うんだよ。
お絵描きごっこやる暇あんなら勉強くらいしろよ。ママにもそう言われたろ?
これで全部か?んじゃ今からこいつら全部叩き潰すから。目ぇ逸らすなよ。
ハイっ!これにてしゅーうりょーう。お前の絵はこの通り全部塵になりましたとさ!めでたしめでたし!
あー気分がいいなぁ!いい事すると爽やかな気分だ!ほらどうした?泣いてんじゃねぇよ。てめぇも一緒になって笑えよ障害者。
俺の友達いわくこことここ、あとこの辺りがデッサン狂っ
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