始まりから夏休みまで
☆話はじっくりベッドの上で聞かせてもらう話。
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まま、あいつの為だけに人生を捧げなければならなくなる。
そんなのは嫌だ。
そう思って僕は、己の身一つで家を飛び出した。
「とは言っても一般の高校生が住めるとこなんてどこにもなかったけどね。でもホームレス生活もそれはそれであの家よりかはマシかなって思ったよ。」
「でも、こうしてマイは今住めてるじゃないか。しかもここ高いんだろ?」
「うん。それにはワケがあってね…。」
敵だらけの僕だけど、唯一味方はいた。
それが母方の祖父母。
おじいちゃんとおばあちゃんはなぜだか僕にとても優しかった。
遊びに来る度にわざわざケーキを買ってきてくれたし、絵だってとにかく褒めちぎってくれた。
「そんなおじいちゃんおばあちゃんなんだけど、僕が家を出ていったって知ったら大慌てでね。僕を探しに来てくれたんだ。」
「そんな…優しい人がマイにはいてくれたんだな。」
「うん。それで2人にもワケを話したんだ。この家にいたままじゃだめだからって。僕、変わりたいんだって。そうしたら」
まず2人がよういしてくれたもの、
それが今僕が暮らしてるアパートだ。
元々ここは2人の土地らしく、僕に格安で部屋を提供してくれた。
さらに学生としての生活を何不自由なく満喫して欲しいからという理由で、毎月とんでもない額の仕送りがやってくる。
「でもバイトしてるじゃないか。あれはどうしてだい?」
「人として変わりたいから。内気で人と話せないままじゃだめだからって理由で、接客業をしてるんだ。」
人として変わるため、僕はこの町に引っ越してきた。
でも、結果として僕は
「とはいっても、昔と比べて僕はまるで変わってないんだけどね。」
「…。」
「いざ絵を描こうと思っても、手が震えてどうにもならない。僕の中に刻まれたトラウマは、そう簡単にはいなくなってくれない。」
未だ、あれだけ描きたかった絵は1枚として描けていない。
次こそは描こう、そう思って僕は道具を買う。
でもいざ描くぞというときには怖くなって絵を描く前にやめてしまう。
でも次は必ず。いや今度こそ。
そうやって繰り返し思い続けるうちに、あの"作業部屋"には知らず知らずのうちにどんどん手付かずの道具がたまっていった。
絵が描きたいのか描きたくないのか、自分でもよくわからなくなり…。
そうして絵を描くためと用意した部屋に、鍵をかけた。
「そういうワケかい…。」
「うん。馬鹿でしょ?」
「ああ、馬鹿も馬鹿、大馬鹿者だ。変わろうとしたのに未だに昔のこと引きずって変わりゃしねぇ。」
「…。」
「けど、そんなますたあ殿に気付けなかったおれも大馬鹿者サ。」
と、それから話が途切れる。
隣合ったまま、何分か経過しこのままでは良くないと思った僕は
「でもね!」
「?」
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