第165話
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回転して、溢れそうになった鍋の具や汁を元に戻す。
回転が終える頃には、鍋はちょっとだけ波打っているだけで、店員さんも鍋も無事だ。
店員さんと鍋を救ったのは麻生恭介である。
「だ、大丈夫ですか!?」
店員さんにぶつかった生徒が怪我などをしてないか、確認しながら聞く。
幸いにも店員さんは怪我一つない。
「あ、ありがとうございます。」
突然の展開に少し動揺しながらも、助けて貰った麻生に礼を言う。
「気にするな。
この鍋が台無しになれば、あんたもクラスの連中も良い思いはしないからな。」
そう言って、鍋を持ってコンロの上に乗せる。
店員さんの顔は軽く赤くなっており、ぼぉ〜と麻生の後ろ姿に見惚れている。
これはやられたな、と男子生徒全員は思った。
しかし、自分達が騒いだせいでこうなったので何も言う事ができない。
ガスコンロの上に乗せて、制理の隣に座る。
「・・・・・・」
クラスメイト達に宥められたにも拘わらず、今度は麻生に向けて不機嫌丸出しの視線を向ける。
もちろん、その視線に気づかない麻生ではない。
「どうした?」
「別に・・・・」
茶碗に割った卵を落して、箸で掻き混ぜる。
気のせいか、卵を掻き混ぜる制理の手が乱暴に見える。
なぜ怒っているのか、麻生は全く分からない。
ともかくすき焼きパーティが始まった。
隣では卵が掻き混ぜるのが遅い上条に苛立った制理は、上条の茶碗を強引に奪い素早く掻き混ぜる。
少しやつ当たりが感があったが麻生は何も言わない。
下手に口を出せば、こっちまで飛び火しかねない。
それを見越してなのか、青髪ピアスと土御門は制理から離れた位置で席に座っていた。
上条に注意を向けているおかげで上条以外は肉を食べる事ができたが、上条は狙ったかのように肉に見せかけて、煮汁を吸ったしらたきだったり、肉の小さな切れ端だったりと散々な結果だ。
しかも、無闇に菜ばしで鍋をかき回す豆腐が崩れると言われゲンコツを貰った。
それでも何だかんだ言っても鍋を食べるのは楽しいものだ。
むしろ何で今までウチでは鍋をやらなかったんだろう、と上条は首をひねっていたが。
「はっ!?
そうか・・・・インデックスの腹具合の問題がッ!!」
その懸念に気づくよりも一足早く、白い修道服を着た少女の眼がギラリと輝く。
とんでもなく嫌な予感がした。
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