始まりから夏休みまで
兄の話
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あ!!!!!!」
咆哮、とでも言えばいいか。
人目の迷惑もはばからず、彼は行き場のなくなった悔しさを声に出して上へ放った。
しかし、そうやったって変わらない。
悪いのは全て自分という事実は。
そして何よりも、
受験に落ちたという恥ずかしい事実を弟に突き止められたことが彼のプライドをズタズタに切り裂いた。
「全部てめぇのせいだ!!!どうして俺が!!なんで!!絵ばっか描いてるてめぇが!!!」
「…いい加減にし」
「うるさい!!!!」
いい加減うるさいのでそろそろ黙らせてやろうかなと動こうとした北斎だが、弟の声で兄は一瞬にして黙った。
そう、弟だ。
今まで兄に歯向かわなかった弟の、はじめての反論だった。
「マイ…?」
「どうして今更帰らなきゃならないんだ!!もう僕はお前達とは縁を切ったんだ!お前はもう兄じゃない!もう関係ない!!早くこの町から出ていけ!!」
溜まりに溜まったものを舞は一気に吐き出した。
それに対し兄の恋は
「は?…なんだよお前…それが兄に対する態度かよ…え?」
つい先程とは打って変わって、聞こえるか聞こえないかくらいの声でそう呟く。
「言ったろ。マイはもうお前とは縁切ったって。だからお前はもう兄貴じゃねぇのサ。」
「…。」
舞は冷たく恋を見下ろす。
今まで見たことの無い顔でこちらを見下ろす弟。
もう何も言葉が出ない。
「な、なぁ…」
と思っていた。
「まだあんのかい?」
「ああ、そっちの低学歴なクソ弟に用はないが、お前だよ。」
恋が指さしたのは北斎。
舞の隣に立つ、サーヴァントの北斎だ。
一体なんの用があるのだろうかと話だけは聞こうとしたが、その内容はとても酷いものであった。
「なぁ…そんなやつよりも、俺の女になれよ。」
「は?」
手をちょいちょいと動かし、おいでと手振りをする恋。
何がどうしてこうなったらそういった考えになるのか、
それは舞にも北斎にも分からない。
ただ恋は勝ち誇ったような汚い笑みを浮かべ、北斎を口説き始めた。
「そんな彼氏、面白くねぇだろ?成績も良くねぇ、運動もできねぇ、気持ち悪ぃし、最底辺の人間でしかも将来ニートの穀潰しだ。それに何より障害者と変わんねぇ。だから、俺と付き合えよ。」
「…。」
黙って聞いている北斎。
だがその眉はぴくりと動き、つり上がっている。
「アイツと違って俺は高学歴っていうキャリアがある。いずれ医者になるし病院だって引き継ぐ。いわゆる超エリートの金持ちだ。それに最近キャバクラにも通い始めてな。女の扱いならそこの童貞よりも俺の方が長けてるぜ?あとパパとママに頼めばどんなことだって出来る。どうだ?余程のバカじゃなけりゃ、どっちと付き合えば自分に得かは…分かる
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