始まりから夏休みまで
兄の話
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でよろしいですね。」
「ああ、迷惑かけてごめんよお巡りさん。」
それから、
警察官にはこちらの事情はこちらで解決するのでということで帰ってもらった。
さらに通報で受けた内容と恋の供述した内容があまりにも違いすぎたので、問い詰めたところ恋が悪いことが明らかになった。
そして眼鏡が割れ、両鼻にティッシュを詰め込んだ惨め極まりない舞の兄、恋本人だが
「ふざけやがって!!おい!メガネの弁償代と慰謝料請求してやる200万はくだらねぇからな!!」
「…へぇ。」
怒鳴る兄、怯え、身を縮こませる舞。
しかし彼の隣にいる北斎は笑顔だった。
「弁償だァ?何様のつもりだい?」
「俺は…こいつの兄だぞ!!こいつより偉いんだぞ!!頭もいいし金もある!将来何も無いニート予備軍のこいつと違って!俺は医者になる男だぞ!!」
「ほーう、そうかい。」
「大体お前は何様だ!!女ごときが俺たちの問題に入る権利は無いんだよ!!!」
先程ボコボコにされたというのに、返り討ちになることは分かるはずだが恋は北斎に掴みかかろうとする。
しかし、
「おれ?おれァマイの彼女サ。」
その一言で、恋は止まった。
「か、かの…じょ…?」
「そ。彼女。兄貴なら彼女の一人や二人くらい出来たことあんだろ?」
「か、かの、かの…じょは…。」
口ごもり、急に弱気になる恋。
理由は簡単。彼女なんていたことない。
小中高とすべて学業に捧げてきた彼は、女性はおろか人付き合いすらまともにした事がなかった。
友達はいた。だがそれはあくまで親の仕事関係から来るものだった。
「おや、いねぇのかい?」
弟に彼女がいる。
たったそれだけで彼のプライドは傷付いた。
自分よりも頭が悪く、自分よりも馬鹿で、自分よりもなんの取り柄もないこの弟が、
苦労してばかりの自分ではなく、楽してばかりの弟がどうして彼女を持っている?
「俺は…苦労したのに!!!!」
膝から崩れ落ち、石造りの地面をドンと叩きまた恋は叫ぶ。
「彼女はできねぇ!勉強もうまくいかねぇ!人間関係は滅茶苦茶!両親からは働けと言われる!何もかも上手くいかねぇ!こうなったのは全部!てめぇがいなくなったせいだ!!!!」
「…落ちたんだ。」
「…!!」
力の限り叫ぶ恋。
こうなったのは全部弟の舞のせい、自分は悪くない。悪いのは弟。
そう叫び弟に怒鳴るが、その弟から返ってきた一言で彼は再び止まった。
「お、おち…」
「働けって言われてるなら…そういうことだよね。もし受かっていたらまずこんな所にいないだろうし…何より僕を連れ戻そうなんて考えなかったもんね。」
「…やめろ…うるせぇ…うるせぇ!!」
「大学受験、落ちたんだ。」
「っ…っああああああああああああ
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