ターン39 伝説の復活
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「よし、まずはアタシの……」
「待ってください、糸巻さん。ここは、俺から行きます」
カードを引こうとした糸巻を手で制し、鳥居が1歩前に出る。気勢をそがれた糸巻がその意図が読めない困惑に目をしばたかせている間に、すでにデュエルは始まっていた。
「ほう、まずは若いのからかい?ひひっ、若いねえ。その年齢だと、私の名前は知らないかな?」
「『これは私の不手際、誠に申し訳ありませんが。確かに貴方のことはわたくし、存じ上げません……ですが』」
すうと息を吸い、胸を張って前を向く。ただそれだけで、彼も感知できていた。先ほど糸巻を圧倒しかかりその心を迷わせすらもした、伝説の男と対峙するということの意味を。ただ立っているだけで息が無性に苦しくなり、いくら空気を吸おうとしてもまるで酸素が体に入ってくる気がしない感覚を。
それはまるで13年前、生まれて初めてエンタメデュエルの……劇座「デュエンギルド」の舞台に立った日のように。しかしこの日の勝負にかかっているのは、観客からの大喝采ではない。それでもこの舞台で先陣を切ることの意味は、一体なんだろう。
贖罪のつもり?罪悪感?確かにそれもないとは言えない、しかし今の彼がいまだ本調子からは程遠いボロボロの体を演劇の鎧と仮面で隠し前に出る理由は、もはやそんな小さなものではなかった。どれほど辛いものであろうともすでに進んでしまった時計の針、世界の歴史。控えめに形容してもくそったれだった人生を本来こうあるはずだった過去の栄光から守るため、エンタメデュエルが幕を開く。
「『さあさお立会い、伝説のお方。今宵のキャッチコピーは単純明快、シンプルイズベスト……魔界劇団、世界を救え!たとえ世界がそれを知らずとも、我々のしてきた選択が間違っていないことを示すため!私のターン!』」
「ひひっ、威勢がいいことだねえ。だがこれは1対2の変則デュエル、まずルールの確認をさせてもらうよ。本来ならば人数に差があることでその差に応じて初期手札とライフを増やした状態でデュエルを開始できる……だがね、あいにくだがそれはいらないよ。わずかばかりのハンデだと思っておいてくれ」
「……随分余裕じゃねえか、爺さん」
「これぐらいしてあげなきゃ、糸巻の。ただ2対1にしただけじゃまともな勝負になりやしないのは、ようくわかっているだろう?」
なんてことないように歯をむき出して笑う七宝寺の言外に滲む、圧倒的なまでのその実力に対する自負。何よりも恐ろしいのはそこに傲慢の色は一切なく、ただ何気なく事実を口にしているという一点だった。だからこそ普段ならば嬉々として噛みつく糸巻も、その時ばかりは何も言い返さない。言い返せなかった、という方がむしろ正しいかもしれない。
彼女にも無論、自分が強者であるという誇りはある。特にここ数カ月での相次ぐ強
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