クリスマス
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「パーティの招待状、変なこと書いてないですよね」
今日はもうクリスマスイブ。
ラビットハウスの開店準備を粗方終えたころ。カウンター席の方から、そんなチノの声が聞こえた。
ハルトがカウンター席を見返せば、ココアが食器を整理しているところだった。チノが、ココアが取り出した招待状を見て固まっている。
「どうしたの? チノちゃん?」
ハルトはチノに近づく。すると、ココアがキラキラの笑顔で同じ招待状をハルトに渡した。
「ハルトさんも! これ、今夜と明日の夜のパーティの招待状だよ!」
「また『ウェルカムかもーん』とかの意味不明な文章でも書いたの?」
そういいながら、ココアから招待状を受け取る。真ん中で折ったそれには、
『さあ 聖なる夜の時間だ 来るがよい!』
「……うん、まあ。ココアちゃんの友達なら、きっとわかってくれるよ」
「ひどい!」
「どうして普通の招待状を書かないんですか……」
「ノンノン。将来の町の国際バリスタ弁護士パン屋小説家にとって、普通のじゃ満足できないんだよ」
「ごめん、もう一回言って」
「私、普通のじゃもう、満足できないの……!」
「そっちじゃないし言い方なんかいやらしいし! なんかココアちゃん、将来の夢増えてない?」
「へへ。あ、でも最近は大道芸人もいいなって思ってるよ?」
「そ、そう……」
「あとでパーティで、面白い出し物期待してるからね!」
「へいへい。お姉様の期待に沿えるものをご用意しておりますよっと」
ハルトは招待状をポケットにしまった。その時、ラビットハウスの扉が開く。
「ただいま! 雪すごい降ってきたよ……!」
赤いコートに身を包んだ可奈美。彼女はビニール傘を振って、傘に積もった雪を振り落とした。
彼女の言葉に、店の外を見てみれば、昼間の見滝原は一面の雪景色になっていた。もともと白の成分が多い木組みの地区ではあるが、雪も相まって、ほとんど白一色になっている。
「本当にすごいな……今年はホワイトクリスマスになりそうだね」
「うーん……この寒さじゃ、ハルトさん、剣術の立ち合いとか無理?」
「クリスマスくらいは剣から離れなさい。さてと、そろそろ開店したほうがいいんじゃない?」
「そうですね」
チノが頷いた。
すでに時刻は四時を回っている。夜に備えた準備も完了し、ハルトは看板を出した。
「よし、それじゃあ……
開店! メリークリスマス!」
「こんばんは! 遊びに来たよ!」
「ラビットハウスが混んでる! 珍しい!」
入店早々そんな失礼なことを言ったのは、チノと同じくらいの年代の少女たち。
それぞれ、条河麻耶、奈津恵という名前だと、ハルトも知ってい
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