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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十二話 戦奴と愚者
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ヴァレリアは詰んでいる。

「Briah―――(創造―――)
 人世界・終焉変生 (Midgardr Volsunga Saga )」

この武器が出た以上攻勢に出る限り、ゲッツ・フォン・ヴェルリッヒンゲンは無敵に等しい。

「さあ、抗ってみろ聖餐杯。これはお前の戦場だ。むざむざ負ける気などあるまい。得意の小賢しさを発揮してみろ。俺の聖戦につまらぬ処刑の記録など刻ませるな」

振り上げられる一撃。それを真っ向から受ければ死の幕引きからは逃れられなくなる。

「それとも、相変わらず子供を殺すしか能が無いのか?」

「抜かせぇッ!!」

左腕の掌底を放ち、それが拳とぶつかり合う。左腕は最早動かない。その体の支配権をヴァレリアは既に失った。このまま続けば当然他の体の支配権も失うだろう。だがそこに悲観は無い。彼にとってマキナが言った言葉は重い。戦奴に解することが出来ないほどに重いのだと。故に彼は叫ぶ。

「私は二度と私の愛を失わない。私は負けぬ。私は死ねぬ。私は永遠に歩き続ける―――止まりなどしないッ!あなたの様な都合のいい安息(おわり)など要らない!!」

「Briah―――!( 創造―――!)」

吠えるトリファは決意する。今ここでありとあらゆる不安要素を度外視してでも己の信ずる武器を出すのだと。故に突破するには今しかない。致命的な隙を見せることになろうとも、ヴァレリアは最後の賭けに出る。聖槍を使い必中必殺の名の下に貫いて見せんとする。

「神世界へ 翔けよ黄金化する白鳥の騎士 (Vanaheimr――Goldene Schwan Lohengrin )」

同時にクラウディウスがアルフレートの(やく)しから逃れる。魔術によって左腕を対価に束縛から逃れる強靭さを得た上で。

「だがなクリストフ。確かに俺はハイドリヒの戦奴だが、お前ほど矛盾してはいないつもりだぞ」

「――――――ッ!!」

僅かに、しかし確実にその言葉はヴァレリアに突き刺さり精神(ココロ)を揺さぶる。それは致命的なミスであり彼一人では覆せるものではなかった。一人ならば(・・・・・)

「ウオォォォォ――――――!!!」

左腕を犠牲にしてアルフレートから逃れたクラウディウスが目の前に立つ。右腕だけになりながらも瞬時に多重の防御魔方陣を正面に作り出したが、

「―――甘いぞ―――」

無意味、無駄、無秩序に呆気なくそれらは蜘蛛の巣でも散らすかのごとく破壊され、そして……

「あ……ッ?」

逆転劇など起こるでもなく砕ける。目の前で何が起きたのかも分からない様子を見せるクラウディウス。しかし、魂は砕け、最早それすら彼の残心(ざんしん)でしかない。だが、彼は確かに、虚ろながらに呟いた。

『矛盾して
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