episode14『助けてと、そう言ってくれるのを待っていた』
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生きたいと願う大切な家族たちのこころ。
――え〜、勉強やだよ!シン兄、外であそぼ!
『死なないで』
――シン兄〜!聞いて、マツリがさぁ!!
いくつもの声が、いくつもの思い出が、ヒナミの“せかい”を埋め尽くす。逢魔シンと共にありたいという大切な家族たちの願いが、言葉が、ヒナミの迷いに揺れる心の背中を押す。
『置いていかないで』
――シン、お前は本当に皆から懐かれているなぁ
『お別れなんてやだよ』
ああ、きっと。
きっとこれは、記憶の中の言葉なんかじゃなく。
「……シン、聞こえる?」
この言葉は、きっと。
『シン兄と、一緒に居たいよ』
「――あなたの、ほんとの家族が、呼んでるよ」
「――ぁ」
シンが、泣きそうな眼で、くしゃりとその顔を歪めた。
『シン兄を助けて』
『帰ってきて、シン兄』
『たすけて』
『いかないで、死なないで』
『もう、お別れなんてやだよ、シン兄』
『たすけて』
『たすけて』
『たすけて』
聞こえる、聞こえるんだ。
皆が、逢魔シンという少年の家族たちが、みんな、みんな、彼の帰りを待っている。彼の無事を祈っている。彼との別れを恐れている。
けれど一つ、違う声が、混じっていた。
耳を澄ませよう、探り出そう、誰かが助けを求めてる、誰かが泣いてる、誰かが救われたがってる。
たすけて、たすけて、と。
耳を澄ませて、よく聞いて、でも、きっとその声は、ほら。
「――たす、けて」
「やっぱり、あなたの声だ」
意志が、存在が集う霊質界で彼は、逢魔シンは。
――確かに、助けを求めていた。
――――――――――――――
――掘削許可。
紅蓮の炎が体を焼く、蠢く鈍色の鎧が浅くヒナミを裂く。
けれど、構わない。きっと彼は、こんな傷なんて何でもないくらいに傷ついているから。追い詰められて追い詰められて、もうどうしようもなくなってしまうくらいに疲れているから。
だから助けよう。みんなを助けてきた彼を、疲れ切ってしまった彼を、今度は私が助けよう。
「応えて、シン。私を家族だと、そう言ってくれるなら。あなたの世界は、私も一緒に背負うから」
――だから、その約束をしよう。
「わたしの世界は、あなたのもの」
シンの頼みを踏み付けて、シンの願いの手を取って、そうして差し出したゆびきりの小指に、シンは。
「|掘削、開始《まい、にん
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