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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode14『助けてと、そう言ってくれるのを待っていた』
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ものではない。
 ようやく見つけた安息を、信じられる家族を、そのきっかけを作ってくれた彼を、そんな簡単に見捨てられる筈がない。

「それじゃあ、シンが」

「僕の事は、もう、忘れるんだ。シスターにも皆にも、そう伝えておいてくれるかな」

「できないよ……!みんな、みんなシンが……!」

「皆が大人になった姿が見れないのは残念だけど、しょうがないよ」

「しょうがなくないっ!!わたし、わたしだって、シンが家族になってくれたから、みんなと、ここで……!」

「ひなみ」

 泣きながらそう叫ぶヒナミの肩を、シンの両腕が掴んだ。

「――ぼくは、もう、つかれたんだ」

 今まさに涙を流しているヒナミよりも、よっぽど見ていられない顔だった。

 声が出なくなった。そのあんまりに憔悴した表情を前に、何も言えなくなってしまったのだ。
 ぱくぱくと、何か言い返したくて口を開けるが、やっぱり何も言葉にならない。どうにか彼を説得しようとヒナミの肩から力なくずり落ちた彼の両手を取るが、何もかける言葉が見つからないのだ。

「おねがいだ、ひなみ」

「や、だ……!」

「ここで、おわらせてくれ」

「やだ、よ……!」

 一体、何が正しさなのかが分からなくなった。
 彼の破滅願望を止めることは、きっと社会的には正しいことなのだろう。だがそれはあくまで客観的視点の話、本当に彼の事を想うのであれば、もう休ませてやることが正しいのではないかと、そんな考えが頭をよぎってしまう。

 泣きたくなるような声で懇願するシンを前に、ヒナミ自身の心も揺らいでしまう。ここで無理に彼を生かしたところで、この先の人生で彼は果たして幸せになれるだろうか。今よりもずっと苦しくなって、結局全てを投げ出してはしまわないだろうか。

 せめて彼の言う通り、ここで彼を送り出してやる方が――。









 “――シン兄を、助けて――”








「あ」

 声が。
 声が、聞こえた。

 誰でもない、誰かの声だった。
 いくつもの願いが混じりあったような感覚が、音と共に流れ込んできたような気がした。

 ――シン兄ね、がんばったらいっぱい褒めてアイス買ってくれるんだ

 ――ミナちゃん、シン兄知らない?きょうは鬼ごっこして遊ぶ約束してたんだ!

 それは記憶だ。ヒナミの中にあるここでの生活の中の、なんでもない一幕の記憶。本当に何の変哲もない、微笑ましい“きょうだい”達の声だ。

 ――シン兄また怪我したの?だいじょぶかなぁ?

 ――あ、居た!シン兄!ミナちゃん!

 逢魔シンという少年に惹かれ、彼を慕う、何人もの“きょうだい”たちの呼び声。彼を求め、彼と共に
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