episode14『助けてと、そう言ってくれるのを待っていた』
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が何人も居る。
そしてその中で特に目を引くのは、魔鉄器前で佇む赤みがかった黒髪の少女だ。
「……シンと、契約に失敗して大怪我したっていう」
「うん。ヨシカ、っていうんだ」
彼女が何を喋っているかは分からない、あくまでこれは記憶の再現に過ぎず、今のシンが何をしようと、何を言おうと、この世界は映像のように流れ過ぎていくだけだ。
黒髪の魔女は何事かをシンと話したのち、契約に臨む。シンもまたそれに応えるように魔鉄器へと手をかざし、その瞼を深く閉じた。
僅かに魔鉄器が輝きを放って、二人の姿を白銀の光が包む。契約に伴って、今、魔女たる彼女は逢魔シンの世界を垣間見ているのだ。
「……!」
「――。」
突如として、ヨシカが膝から崩れ落ちるように倒れた。
恐怖と苦痛の入り混じった表情を浮かべながら、彼女は聖堂の床を転がりまわる。血涙を流し、喀血し、鼻血を流し、耳からも血を垂らしながら、喘ぐように天井を仰いだ。
その体には大きな火傷痕にも似たアザが広がり、無数の傷跡が浮かび上がる。それはまるで、先程炎の中で見た幼少期のシンの姿にも似ていた。
記憶の世界の大人たちが慌てて駆け寄る中、シンだけがただ彼女を見下ろして立ち尽くす。ただ一人その様子に気付いた智代がシンに駆け寄って何事かを叫ぶが、それもこの世界では察しようがない。
シンはただ、疲れたような顔で、凄惨な紅に染まった記憶の世界を眺めていた。
「これが、僕のもう一つの罪だ」
「……罪」
「自分の身可愛さに贖うべき罪から逃げた結果、何の罪もない女の子を傷つけた」
逢魔シンという少年が抱える罪の記憶。
己の両親を殺し、罪なき少女を深く傷つけた。その事実が、今のシンの歪んだ精神性を形作っている。あまりに歪になった彼の心を形成している。
余りに重い罪の意識に圧し潰されそうになって、逃げだしたくて、差し伸べられた手に縋りついて、その結果手を差し伸べてくれたその人をズタズタに傷付けた。
彼の浮かべる辛うじて形を保っているような微笑みが、あまりにも痛々しかった。
「だからさ、僕は、最期に、出来ることをしたいんだ」
「さい、ご……?」
それは、あんまりにも突然な別れの宣告だった。
「僕はもう、きっと『崩界』の段階にある。その力を全部使えば、きっとあいつを殺せる」
「ころ、せる……?」
「あいつは悪だ。僕と一緒に、全部燃やし尽くす。あいつも一緒に連れていく。だから、ヒナミは皆を連れて逃げてくれるかな」
ちょっとしたお願いをするように、まるでおつかいでも頼むかのように、シンはヒナミの頭を撫でながらそう申し訳なさそうに笑った。だが、その内容は到底受け入れられるような
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