暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第74話:それは小さな亀裂
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感謝してもしきれない」
ソーサラーはそう告げると、ナスターシャ教授に背を向け操縦室から出て行こうとした。
その彼の背に、ナスターシャ教授は声を掛ける。
「マリアに、セレナ……。ソーサラー、もしや貴方は……」
ナスターシャ教授の声に、ソーサラーは振り向くことなく操縦室から出て行った。彼女は暫く彼が出て行った操縦室のドアを見つめ、そして操縦席の背もたれに体重を預け大きく息を吐いた。
「そうでしたか…………貴方は、そこに居たんですね」
呟かれたナスターシャ教授の言葉は、誰も居ない操縦室の中に静かに響きそして消えていった。
その頃、貨物室ではちょっとしたトラブルが起こっていた。
切歌の拳が自分よりずっと身長の高いウェル博士を殴り飛ばし、壁にぶつかった博士はそのまま尻餅をついた。
「下手打ちやがって! 連中にアジトを押さえられたら、計画実行まで何処に身を潜めればいいんデスか!?」
ウェル博士の胸倉を掴む切歌。その切歌を、マリアが宥めた。
「お止めなさい。そんな事をしたって、何も変わらないのだから」
「…………胸糞悪いデス」
マリアに言われたからか、渋々ウェル博士の胸倉から手を離す切歌。宥めはしたが、マリアはウェル博士の方に軽く視線だけを向けており後の全身はそっぽを向いている。
「驚きましたよ。謝罪の機会すらくれないのですか?」
あまり悪びれた様子を見せないウェル博士に、切歌が地団太を踏み唸り声を上げる。
そこにソーサラーがやって来た。彼は貨物室内を見渡し、その様子から事情を察したのか肩を竦めると尻餅をついたウェル博士の腕を掴んで立たせた。
「いやすみませんねぇ。こちらのお嬢さん方と言ったらこっちの話も聞いてくれないんですから。持つべきものは男の仲間ですよ」
おどけた様子のウェル博士に、ソーサラーは一瞥だけして視線を外した。
すると今度はマリアの方がソーサラーに近付き、彼に突っかかった。
「貴方! さっきは何で直ぐに撤退しなかったの!? あそこで白い魔法使いと戦う必要なんて無かった筈でしょ!?」
マリアからの詰問に、しかしソーサラーは何も答えない。ただ静かに顔を背けるだけだ。
それがマリアの神経を逆撫でし、今度は彼女がソーサラーを殴り飛ばす勢いで襟元を掴んだ。
そこに操縦室からのナスターシャ教授の通信が届いた。
『虎の子を守り切れたのがもっけの幸い。とは言え、アジトを押さえられた今、ネフィリムに与える餌が無いのが、我々にとって大きな痛手です』
先程のソーサラーの魔法による回復もあってか、今のナスターシャ教授に不調は見られない。
「今は大人しくしてるけど、いつまたお腹を空かせて暴れま
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