第三章 リベン珠
第37話 完伝と想い出の日
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よ。その通り、これは純狐の為なんだよ」
「やっぱり……」
予想通りの答えだったと、勇美はうんうんと頷きながら聞いていた。
「私の気は完全ではないものの、それなりに晴れている。だが、純狐はどうだ? 彼女は自分の純化の能力で恨みが混じり気の無いものになってしまっているのだよ。だから、頭で分かってはいてもそれを受け止める事が出来ないんだ。そんな彼女が、今からはい、復讐を止めて下さいと言われてそう出来はしないだろう」
「そうですよね……」
ただでさえ恨みの力というのは凄まじいのだ。そして、純狐の場合はその恨みの濃度が不純物のないドロドロしたものとなって自身を支配しているのだ。それに抗うのは困難を極めるだろう。
「私とて、ずっとそれを続けさせていけないのは分かっている。だが、こういうのは時間が掛かるだろう。だから、我がままな願いなのは承知だが、それまで少し辛抱して欲しいんだ」
「ヘカーティア様……」
勇美はそう呟くしかなかった。神として永い時を過ごす彼女達であるから、もしかしたら勇美の生きている間には彼女達は再び襲撃はしないかも知れない。だが、それを他人事として見逃すのは勇美の性格上出来ない事でもあるのだった。
その事もヘカーティアは重々承知の上だろう。だから、彼女はお詫びの意味も籠めて、こんな話を切り出して来るのだった。
「ところで、私達は幻想郷に住む事にしたんだ。だから勇美、お前にも稽古をつけてやろうかと思うんだが、どうだ?」
『悪い話じゃないだろう?』そうヘカーティアは話を持ち出したのだ。
勇美は今まで主に依姫に稽古をつけてもらっていた。だが、それは彼女が長期的に地上に滞在していた間までの事。いよいよ以って月に帰った彼女はもう、頻繁には勇美の下へ赴く事は出来ないのであった。
だが、これから地上に住む事にした自分なら、いつでも勇美の面倒を見てやれるだろう、それがヘカーティアの主張する話の内容であった。
この『オイシイ』提案に、勇美は二つ返事で承諾する事にした。
「はい、喜んでお願いします♪」
「決まりだな。私は『教える』という点では依姫よりは劣るかも知れないが、そこは愛嬌だと多目に見てくれ」
「そんな滅相もないです。ヘカーティア様程の方から直々にご指導頂けるなんて光栄です」
ここに、ヘカーティアと勇美の間の、かなり思い切った協定が結ばれたのであった。
と、ここで勇美には聞いておきたかった事が脳裏をよぎったのである。
「ところで、やっぱりヘカーティア様達は幻想郷に住む事にしたのですね。八意先生の言った通りでしたよ」
「ああ、幻想郷は八意が気に入る位の所だからな、私も興味を持つ所というものさ」
そう言ってヘカーティアは豪快に笑うのだった。そして、勇美はお二人はどういう関係なのだろうと頭の中で首を傾げるのだ
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